「日本へ留学した者は民族反逆者」と言った 韓国大ベストセラー作家の偽善

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「狂気に満ちた歴史歪曲小説」と批判された趙廷來のベストセラー

 趙廷來は韓国でベストセラーになった小説『太白山脈』と『アリラン』を執筆した。

 この2つの小説はこれまで、韓国でかなりの議論を巻き起こしてきた。

 趙は実際、『太白山脈』で扱った1950年の朝鮮戦争の場面で、北朝鮮軍が犯した民間人虐殺や蛮行については言及せず、韓国軍と米軍の犯罪を強調して描写したとして非難を浴びた。

 特に共産党や北朝鮮軍に殺害された人々は、すべて殺されて当然の「親日派」、「民族反逆者」として描かれた。

 そのため「この小説を韓国人が書いたのか、北朝鮮人が書いたのか」「親日美化は憎悪するくせに、自分は北朝鮮と共産主義を美化しているのではないか」という指摘が出るのは当然だった。

 小説のいくつかの部分で、事実を歪曲したという問題も提起され、反国家活動を規制するための法律である国家保安法違反で告発されたが、2005年に検察は、彼に容疑がないとして起訴しなかった。

 小説『アリラン』では朝鮮併合時代、日本の愚民化教育、親日派から土地を奪われた朝鮮人、日本に抵抗した朝鮮人たちの独立運動などについて描いた。

 日韓両国でベストセラーになった『反日種族主義』の著者である李栄薫(イ・ヨンフン)氏は、『アリラン』を「狂気に満ちた歴史歪曲小説」と批判している。

趙廷來と文在寅が重要視する「表現の自由」の底の浅さ

 趙廷來の発言について韓国で非難が続くと、親文在寅派が主流である民主党は彼を庇い始めている。

 民主党スポークスマンは「趙廷來先生の言葉がやや行き過ぎたとしても、礼儀を守ってほしい」と語った。

 よくよく見れば、民主党が趙廷來を守ろうとする理由も納得できる。

 趙廷來は以前から文在寅大統領を支持し、今年1月の文化芸術家の行事では、文大統領夫妻のそばで乾杯して親交を誇示した。

 趙廷來は国家保安法違反の疑いで取り調べを受けたこともあり、同法の廃止を主張した。

 ところで、文在寅大統領もかねてから国家保安法の廃止を促してきたが、その理由について「表現の自由」と「思想の自由」を挙げてきた。

 もちろん趙廷來もこれに対する同様の見解を示してきたが、それなら「日本留学をすれば、親日派」という彼の主張も、こじつけに過ぎないことになる。

 個人の表現と思想の自由を重要視するなら、韓国人が日本に留学する自由も、日本と交流する自由も、日本人と友達になる自由も、日本の文化を学ぶ自由も、日本人と結婚する自由も尊重されなければならない。

 趙廷來は2007年10月、南北首脳会談に招待されて平壌を訪れ、金正日(キム・ジョンイル)総書記に会ったりもした。

 趙廷來は金正日総書記と握手をし、「気分が良かった」と振り返った。

 核兵器を担保に周辺国を脅かし、一党独裁を維持する北朝鮮を美化する小説を書き、金正日総書記と握手して気分が良いという自身の自由は大切で、他人の自由は無視するということなのか。

 回りくどい説明をせずに、「私は北朝鮮が好きで、文在寅を支持するが、日本を憎悪するだけ」と言ってはどうか。

韓永(ハン・ヨン)
検察担当記者などを経て現在フリー

週刊新潮WEB取材班編集

2020年10月18日掲載

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