久保建英はオランダ遠征で輝きを失っていた 思い出すFC東京「小川諒也」の不安

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“優先順位”の再考

 昨シーズンのJリーグで左SB小川諒也(23)[FC東京]が8月に左足首を傷めた。全治6~8週間のケガで、11月下旬にはチームの全体練習に復帰するまで回復した。リーグ戦出場も間近と思いきや、小川本人は「まだゲーム体力が戻っていません」と不安を口にした。いくら練習で100%追い込んでも、強度の高い実戦を戦い抜く体力は別物ということだろう。

 小川と同じ悩みを久保は抱えているのではないだろうか。

 過去の日本代表の監督は、外国人であれ日本人であれ、ヨーロッパでプレーする選手、いわゆる“海外組”を重用してきた。Jリーグより強度の高い試合や練習をしているのがその理由だった。日本代表ではレギュラーでも、海外のチームへ移籍したらポジションは保証されていない。そうした競争も選手をタフにするとして、海外組は国内組に優先されてきた。

 しかし、いまは海外組だけで2チームを作ろうと思えば作れるようになった。このため“海外組だから”という優先順位はもう辞めるべきである。海外組でもまずレギュラーかどうか。次に試合出場の多寡を招集や試合出場の基準にすべきだと思う。

高まらない完成度

 そういう意味で森保監督は、ファンはもちろん、とりわけメディアの期待が高い久保といえども特別扱いをしなかったのは高く評価したい。

 その森保監督だが、A代表の勝利は昨年12月14日のEAFF E―1選手権の香港戦(5-0)以来となる(それまで試合がなかったのだから当然だが)。今年1月にはタイで開催されたU―23アジア選手権でU―23日本代表を率いたものの1分け2敗に終わっている。

 そんな森保監督が目指すサッカーのコンセプトは、1年ぶりの代表マッチと練習でも「新たに伝えるコンセプトはない」とした上で、「チームにはベースがあってオプションがある。問題を解決、修正能力のあるのが強いチーム」と考え、「ベーシックな部分を伝えたうえで、オプションは選手が話し合った上で変えていって欲しい」と、選手の自己判断を尊重するスタイルである。

 試合が始まってしまえば監督のできることは限られている。そこでピッチ上で選手らが考えて、臨機応変に対応して欲しいというのが森保監督のサッカー観だ。恐らく日本人に一番欠落している発想でもあるだろう。

 ただし不安がないわけでもない。森保監督はスタッフらと共に綿密なスカウティングにより選手を発掘し、A代表と五輪代表のラージグループを広げてきた。それ自体は悪いことではない。気がかりなのは、いつ選手をセレクトする作業に入り、チームとしての完成度を高めていくのか、なかなか見えてこないことである。

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