オリラジ中田「YouTube大学」の罪 「芥川賞・直木賞の問題点」はヒドすぎる

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売れない文芸誌

 この記事の中で、重要なポイントは以下の2つだ。

《掲載した文芸誌「文学界」は創刊以来初めて増刷し、累計で4万部を記録した》

《3月11日に単行本化された際の初版はなんと15万部。現在39万部売れている》

 毎日新聞の記事から、2つのことが分かる。前出の記者が言う。

「まず中田さんの解説と異なり、芥川賞候補作が発表されても、それが掲載された文芸誌の売上は変わりません。芥川賞効果などありません。売れるのは受賞作が選評とともに再録された『文藝春秋』です。

『文學界』は文化公論社が1933年に創刊し、1936年7月から文藝春秋が刊行を手がけました。雑誌も売れれば増刷します。

 しかし、『火花』の掲載号が創刊以来初めての増刷ということは、『文學界』は80年以上、数多くの芥川賞候補作を掲載してきたものの、売上に大きな影響はなかったということです」

「文藝春秋」は本当に売られていたのか?

 芥川賞が発表されても文芸誌が売れない理由は、ある意味で簡単だ。賞が決まった時、候補作が掲載された号の販売は終わっている。要するにバックナンバーになっているのだ。

 そして2つ目は、『火花』が受賞前の3月に単行本として出版されていたことだ。おまけにベストセラーになっていた。

 もう一度、時系列を確認しよう。1月7日に「文學界」が発売、3月11日に単行本が出版。6月19日に候補作、7月16日に受賞作が発表。そして選評とともに受賞作が再録された「文藝春秋」が発売されたのは8月7日のことだった。

 そのため、『火花』が芥川賞に選ばれたというニュースを見て書店に駆け付けた場合、単行本の『火花』は書店に置いてあったはずだ。なかったとしたら売り切れていたのだろう。

 もし書店で『火花』が掲載された「文學界」や「文藝春秋」が販売されていたとしたら、そのほうがおかしい。先に指摘した通り、前者はバックナンバーであり、後者は印刷すらされていなかったのだ。

 だが、中田は動画で次のように解説している。

いつ「文藝春秋」を買った?

《芥川賞、直木賞を取りましたっていう時に、本屋行くでしょ。「『火花』ありますか」って言ったら、「いや、まだ出ていません」》

《又吉さんの『火花』読もう、本屋行って「『火花』どれですか?」って言ったら、「『火花』出ていません」なんですかって、「『文藝春秋』買ってください」って言うから「文藝春秋」買ったけど、普段1回も買ったことないよ》

 前出の記者が言う。

「芥川賞の受賞作が発表された後で、書店員が『火花』の単行本が刊行されていないと案内したのなら、明確な間違いです。

 更に『「文藝春秋」を買ってください』は、事実なら8月7日以降の話になります。中田さんは動画で『受賞を知って、すぐに本屋に向かった』というニュアンスの発言をしていますが、発表は7月です。

 1か月の“ずれ”があり、時系列と矛盾する可能性があります」

 次に直木賞を見てみよう。この賞は「優れた大衆小説」に与えるとされる。

純文学とエンタメ

 文芸誌と同じように、エンタメ系小説を掲載する専門誌も発行されている。大手の総合出版社は文芸誌と対にしていることが多い。

 講談社なら「群像」と「小説現代」、新潮社は「新潮」と「小説新潮」、集英社は「すばる」と「小説すばる」、文藝春秋が「文學界」と「オール讀物」という具合だ。

 講談社が出版した単行本が直木賞にノミネートされたとして、エンターテイメント系の「小説現代」が初出という例は枚挙に暇がない。

 だが、文芸誌の「群像」に載った小説が、直木賞にノミネートされることは、基本的にはありえない。

 それどころか、直木賞の場合は書き下ろしとして、初出が単行本というケースも珍しくない。雑誌に掲載・連載されず、最初から本として出版されたのだ。

『火花』は153回(2015年上半期)の芥川賞を受賞したが、直木賞の153回は東山彰良(52)の『流』(講談社文庫)が選ばれた。

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