オリラジ中田「YouTube大学」の罪 「芥川賞・直木賞の問題点」はヒドすぎる

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「文藝春秋」は売れる

『流』は書き下ろし作品のため、最初から本で出版された。それだけではない、この153回で直木賞にノミネートされた6作品のうち、3作品が書き下ろしだった。

「直木賞の場合、受賞作の初出は『オール讀物』のようなエンタメ系小説の専門誌だけでなく、新聞の連載小説が単行本になったケースもあります。

 初出は芥川賞より多様ですが、中田さんの言うような“文芸誌”に掲載された作品から直木賞候補が選出されることはありえないでしょう。

 文芸誌は基本的に純文学作品を載せ、エンタメ小説とは距離を置いているからです」(同・記者)

 今でも芥川・直木の両賞はヒット作を生む期待が強いが、それはあくまでも単行本や文庫が売れる可能性があるからだ。記者が言う。

「先にも言ったように、芥川賞の受賞作を再録した『文藝春秋』が売れるのは事実です。それこそ『火花』が再録された時の発行部数は110万3000部でした」

書籍も売れる

 上には上がある。

「2004年3月号は綿矢りさ(36)の『蹴りたい背中』(河出文庫)、金原ひとみ(37)の『蛇にピアス』(集英社文庫)の2作品を再録し、発行部数は118万5000部に達しました」(同)

 だが、この3作品は単行本も売れた。『火花』は253万部、『蹴りたい背中』は127万部、『蛇にピアス』は53万1500部という数字が残っている。

 直木賞も先に見た『流』は24万部。今年の上半期で受賞した馳星周(55)の『少年と犬』(文藝春秋)は21万5000部。これが書店にとって悪い部数であるはずがない。

 更に、東山彰良のような中堅、馳星周のようなベテランが受賞すると、これまでに発表された単行本や文庫も売れる可能性がある。ビジネスの規模は更に大きくなる。

【6】芥川・直木賞で利益を得ているのは、両賞を主催している《雑誌》だからだ。

 これも間違いだ。

巧妙な“逃げ口”

 芥川賞と直木賞を主催しているのは、日本文学振興会という公益財団になる。ちなみに設立も運営も文藝春秋が行っている。

【7】本屋大賞は書店で既に売られている単行本から選ぶ。ただし、本屋大賞は書店員全員が選ぶというイメージがあるが、選考委員の数は300人に過ぎない。

 こちらも「選考委員」という言葉が引っかかるし、投票した書店員の数が事実と異なる。本屋大賞の公式サイトには、選考の過程を次のように説明している。

《第17回目となる2020年本屋大賞は2019年12月から一次投票を開始。一次投票には全国の477書店より書店員586人、二次投票では300書店、書店員358人もの投票がありました》

 書店員の経験も持つ編集者は、動画を見て「あまりの酷い内容に、途中で見るのを止めてしまいました」と言う。

「困ったことに中田さんは、いくつもの“逃げ道”を用意しています。例えば動画の冒頭、永江朗さん(62)の『私は本屋が好きでした』を参考文献として紹介し、『ここに書かれていることを紹介しているだけです』という雰囲気を作るのです」

“参考文献”の妥当性

『私は本屋が好きでした あふれるヘイト本、つくって売るまでの舞台裏』(太郎次郎社エディタス)

 この書籍を読んでみると、芥川賞と直木賞、そして本屋大賞について言及した部分はあることはある。

 だが、この本は「どうして書店にヘイト本が置かれてしまうのか」という問題意識で書かれたものだ。

 この書籍の本文は250ページあるが、芥川賞、直木賞、本屋大賞について書かれているのは182ページから188ページまでの7ページに過ぎない。

 全体に対する割合は僅か2・8%。おまけに著者は《やや脱線するが、本屋大賞が生まれた背景は》と書き出している。

 あくまでも脱線した部分なのだ。中田が3賞の問題点を解説するのに、適した書籍とは言えない。

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