「超巨大台風」が東京を直撃した場合「23区のうち17区が浸水」 専門家が警鐘

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気象庁の異例の対応

 襲来前から「100年に1度の大雨」と称されていた台風10号。結果的に当初の被害想定を下回ったが、専門家は「今後さらに強力な台風が首都圏を直撃する可能性がある」と警鐘を鳴らすのだ。では、もし「超巨大台風」が首都圏を直撃した場合、何が起こるのか――。

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 九州や沖縄などを直撃した台風10号は、死者・行方不明者合わせて5千名以上を数えた1959年の「伊勢湾台風」並みの勢力を持つとされた。中部地方を中心に猛威をふるったこの台風は、戦後の自然災害による死者・行方不明者数でみれば、東日本大震災、阪神・淡路大震災に次いで多い。

 むろん、今回の台風10号も死者2名、重軽傷者100名超、行方不明者4名(9月17日現在)という人的被害が出たことは無視できないが、7月の九州豪雨のような大規模な河川の氾濫などは起こらず、当初の被害想定を下回った。「特別警報」を出すと“予告”していた気象庁も、直前で台風の勢力が基準を満たさなくなったとして撤回している。

 だが、拍子抜けと言うなかれ。これをもって気象庁を“オオカミ少年”呼ばわりするのは早計だろう。

「台風の勢力が弱まったために、被害が抑えられたと考えるのは誤りです」

 と話すのは、気象予報士の森田正光氏だ。

「確かに、規模は予想より若干下回りましたが、降雨量は500ミリを超え、最大瞬間風速も60メートル弱を記録しています。ちなみに風速に『3・6』という数字をかけると時速に換算できます。風速60メートルはだいたい時速216キロ、走行中の新幹線の屋根にしがみつくようなもので、人なんてあっという間に吹き飛ばされる。一般的に風速8メートル以上で歩きづらくなり、15メートル超えで転倒する人が出始める。25メートルで子供が吹き飛ばされ、35メートルなら誰でも吹き飛ばされる。40メートル以上なら軽トラックがひっくり返る勢いです」

被害を最小限にできた理由

 実際、九州各地では看板やゴミが新幹線並みの“殺人スピード”で乱れ飛び、木造家屋が数多く倒壊した。にもかかわらず、被害が最小限に食い止められたのにはワケがある、と森田氏は言う。

「台風10号が列島を襲う1週間も前から、気象庁は会見などで“最大限の警戒”を呼び掛けました。この事前のアナウンスが功を奏して、避難誘導や備えに万全を期すことができたと思います。ちなみに、9月5日の会見では主任予報官に代わり通常は表に出ない予報課長が説明に立った。内輪の見立てで恐縮ですが、予報課のトップが出てきたのを見て、私もこりゃ大変な台風になるぞと思いました」

 口酸っぱく台風の脅威が強調された結果、九州を発着する航空機や鉄道など公共交通機関は軒並み計画運休となり、人の流れは完全にストップ。自治体は早めに避難所を開設できて、ダムは事前放流をすることで余力ができたというのだ。

「台風による被害は事前の準備で大きく左右され、危ない場所に人がいるか否かで大きく変わるもの。20世紀の台風で最も人命が失われたのは、70年にバングラデシュを直撃した『ボーラ・サイクロン』で、30万人以上の死者が出ました。最近では2013年に『ハイエン』という台風がフィリピンを直撃して、5千人以上が亡くなっていますが、インフラの未整備や避難行動が遅れたことで甚大な被害が出たのです」(同)

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