「南ア逃亡殺人犯」が出頭 コンビニ18億円引き出し事件にも関与か

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 17年の時を経て南アフリカから帰国した紙谷惣(そう)(46)。「コロナで仕事も金もなくなった」と出頭した殺人犯に、知能犯の一面があることは知られていない。

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 2003年10月、東京都奥多摩町で、拉致された男性の切断遺体が見つかった。

「この事件で、警視庁が殺人容疑などで紙谷を国際手配していました。今月3日、潜伏先の南アから帰国した紙谷を逮捕監禁容疑で逮捕。警視庁は男性の拉致の経緯とともに、殺人と死体損壊・遺棄容疑でも調べを進める予定です」

 と、警視庁担当記者。事件には松井知行(48)というリーダー格がいるが、

「03年当時、クレジットカードやキャッシュカードの偽造グループにいた紙谷は、不良の遊び人だった松井とつるんでいました。その“仕事”の一環で、東京の六本木に高級クラブを開店する予定だった男性に、松井が、スキミングによる客のカード情報の不正入手を要求。この手口で松井たちは大儲けしていたのですが、この時は拒否されたため拉致して殺したのです」

 男性の遺体発見前後、紙谷と松井はハワイを経由して南アへと飛んだ。

南アから中国を経由

 以来17年。男性殺害の容疑ではこれまでに男女10人が逮捕されているが、彼らは潜伏を続けた。なお松井は南アで自殺したとされる。紙谷こそが、男性殺害事件における真相解明の“最後のピース”なのである。

「南アに逃げた紙谷や松井は、日本から送られてくる盗難ベンツを売り捌いて逃走資金に充てていました」

 捜査関係者がこう明かす。

「紙谷は南アの公用語である英語も理解し、先住民族も使って商売をしていた。10年にサッカーの南アW杯が開催されましたが、その観戦ツアーを騙った被害総額1億円の詐欺事件が日本で起きた。スキミングの知識のある彼の関与も疑われました。居場所を突き止め、翌11年6月に捜査員が南アに赴いたのです」

 だが、南アは死刑廃止国。死刑制度のある国には容疑者の身柄を引き渡さない。

「それで、東京地検検事正名で“死刑は求刑しない”との誓約書をたずさえた捜査員が派遣されたのです。身柄引き渡しが実現しそうなところまでいったものの、結局、叶いませんでした」

 ここで紙谷の身柄をとれなかったことが、のちに、新たな事件を生む結果となった。

「16年、コンビニATMから約18億円が一斉に引き出された事件が起きた。すでに“指示役”や“出し子”など約260人と主犯格を逮捕しているものの、事件は17都府県の広域にまたがっており、盗まれた金の流れを含め、4年経っても全容解明にはほど遠い。一斉引き出し事件に関与していたのは総じて暴力団員や半グレですが、“紙谷が重要な役割を果たしていた”という関係者の供述があるのです」

 その供述とは、

「“一斉引き出し事件で使われたカードは紙谷が作り、南アから中国を経由して日本に入ってきた”というもの。確かに不正利用された偽造クレジットカードは、南アの銀行が発行したクレジットカードの情報が悪用されていた。カード偽造に精通した紙谷が、そのクレジットカードに手を加えた磁気を張りつけていたと見ています。紙谷から“このカードが使えるから、コンビニで1回10万を引き出せ”と指示された人物もいる」

 殺人事件とコンビニ一斉引き出し事件。南アと日本、中国。その“点と線”がつながる日はくるだろうか。

週刊新潮 2020年9月17日号掲載

ワイド特集「過去に例のない…」より

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