「バンクシー」を共同所有する新ビジネスとは 1万円の会員権は7分で完売

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 落札直後、仕込まれたシュレッダーで裁断される少女の絵――。この一件でバンクシーの作品は世界的に注目を集めることになったが、今度は裁断ならぬ“小分け”にして売るビジネスが現れた。

 防弾チョッキを着て走る子供たちを描いたバンクシーの「Jack and Jill (Police Kids)」を、たった1万円(税、サーチャージ抜き)で売り出したのはベンチャー企業「アンドアート」である。8月25日、同社が作品の「権利(オーナー権)」を670口に分けて売り出すと、たったの7分で売り切れてしまったという。鑑定書付きの真作とはいえ、一枚の絵画を「会員権」として刻んで売り買いできるものなのだろうか。

 同社の高木千尋COO(共同最高責任者)が言う。

「絵を所有しているのは私たちの会社ですが、売り買いを決めたり、鑑賞する権利は会員の皆さんにあります。イメージとしてはゴルフ場の運営会社と、その会員権でしょうか。普段、絵は専用の倉庫に保管されており、定期的に絵画鑑賞会や絵を楽しむパーティーが開かれる。会員になると、そこに参加することができます。また、絵にはデジタルサイネージ(電子プレート)がついていて、購入された方のお名前が表示されるようになっています」

 もちろん、絵に飽きたら売りに出すこともできる。その場合は、アンドアートが推奨価格を提示して、購入希望者への売却を仲介してくれるのだという。絵の相場が値上がりしていれば、利益を出すこともできる。

「また、会員の方が亡くなられた場合でも、遺族が会員権を相続する仕組みができています」(同)

 聞けば、アンドアートが発足したのは2年前。IT企業・サイバーエージェントにいた高木氏と、現CEOの2人の女性が、「日本のアート市場を活性化したい」と会員権のビジネスを思いついた。これまで販売した作品(会員権)も草間彌生や奈良美智など15点に及ぶ。

 振り返れば「佐竹本三十六歌仙絵巻」が分割されて売却されたのは101年前のこと。今の世なら会員権の売り買いで済んだだろうに。

週刊新潮 2020年9月10日号掲載

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