大阪都構想は吉村人気で苦戦、それでも反対する“浪速の自民市議”の言い分

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地位アップ期待し賛成に回った自民府議

 さて、浪速の自民党である。都構想に反対してきたが昨年の統一地方選では花谷充愉府議団幹事長と黒田當士市議団幹事長までが維新候補に敗北し、市会は維新が40、自民は19の惨敗を喫した。市長選では構想のデメリットを説いて回った京大卒で関電OBの「自民大阪のプリンス」柳本顕氏(46)が維新に連敗した。

 こうした中、今年6月に各党の市議、府議から成る法定協議会で構想の協定書が可決された。実は自民府議団の一部が賛成に回っていた。「府議団が賛成に回ったのは衝撃でした」と憤懣やるかたない市議団の北野妙子幹事長(60)は「統一選の後、渡嘉敷(奈緒美)前府連会長は『共産党と同じ反対、反対ばかりではだめ』と住民投票賛成を打ち出しましたが、市議団も府議団も市内選出の国会議員も反対でした。法定協議会の検討が進む中でも府議団は反対してくれていました」と振り返る。

 その風向きが変わったのがコロナ、そして吉村人気だ。「休業要請などの決定権限が都道府県となり目立った吉村知事は、財政調整基金を取り崩し、補償対象外の店などへの休業要請支援金300億円支出を決めた。自民府議も求めていたことが聞き入れられ、若い府議たちには広域一元化の利点に気づき達成感もあった。都構想に強く反対していた5期以上の人が辞め、執行部に不満だった若い議員らが一挙に賛成に回ったようです」。

 市議は大阪市内選出と市外選出に分かれる。府の財政は厳しいが、大阪市は潤沢とされる中、「市の財政を府が吸い上げられる」と期待する「市外府議」が賛成してしまう。

「水道代は大阪市だけ安いとか、様々な利益相反が噴き出しました。自分の選出自治体にとって都構想はいいと市域外議員が攻勢に出たのです」(北野氏)。

 元大阪府議のジャーナリスト山本健治氏は「議員の格は府議が市議より上だが、市内選出府議は大阪市内について一切権限もないお飾りで市議からは『お前おるんか』くらいの扱い。都構想で大阪市を解体して市議会をなくせば自分たちがお山の大将になれる。都構想が通れば市議会は解散、市議は区議会議員になり発言力は落ちる。逆に市内府議は地位もアップし、大阪府に大阪市の財源を取り込んで思うように動かせる。大阪府がこうあってほしいとか何も関係ない魂胆で賛成に回っただけ。北野さんも予想はしたでしょうが『この人たちいったいなんやの』と愕然としたはず」と同情していた。

 一方、大阪市民が都構想賛成になりやすい要因がある。一つは地理。大阪市は地理的に府の中心にあり、府の施設も大阪市内の一等地に立地するから「同じ目的の建物が近いところにある」と二重行政に見られやすかった。もう一つは名称。市民は大阪市の名前が消えても「大阪府で大阪の名が残るからいいやん」と危機感がない。札幌市や横浜市、神戸市の名が消えると聞けば市民は大騒ぎのはずだ。

勝負をかける北野妙子市議団幹事長ら

 松井市長は官邸サイドに対して投票日と同日の総選挙を求めているとされる。経費削減になり「二度の住民投票など税金の無駄遣い」の批判をかわせるからだ。これに先立つ9月1日、北野妙子氏は11月1日の住民投票と同日選挙となった場合、公明党が議席を持つ大阪5区から出馬することを発表した。大阪大卒の北野氏はなんの因果か府立北野高校では橋下徹氏の先輩(あの森友学園幼稚園の卒園生でもある)。「港湾も一元化し大阪府港湾局となるなどすでに大阪市を解体してまで二重行政をなくす大義はなく、投票は税金の無駄遣い。バブル以前を前提に維新が呪文のように唱えた都市伝説は消え、構想はもうバーチャルでしかありません」と主張する。

 柳本顕氏、堺市議の野村友昭氏も2区と16区で出馬するとみられる。維新に連敗した柳本氏は「ずっと都構想に反対してきた。賛成に回った公明党の候補を応援するのは矛盾が生じる。自公政権を支持するが、都構想に反対する人の受け皿は必要」と政治生命を賭ける。

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