60年ぶりに高卒者の就職ルールが改定へ これまで応募は1社のみ 多すぎた問題点

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 年間約40万人の大卒就職者の陰に隠れがちな同約17万人の高卒就職者。その高卒者の就活の仕組みが、約60年ぶりに大きく変わろうとしている。現状と見直される点をリポートする。

「100社にエントリーしました」。そんな話を新聞とテレビはよく報じる。就活中の大学生の声だ。「3社から内定をもらった」といった声も取り上げる。

 半面、まず見聞きしないのが、高校卒業予定者の就活。現状はどうなっているのだろう?

 まず、一部の地域(秋田県、沖縄県)の生徒を除き、応募は1社しか出来ない。おまけに学校の推薦を受けなくてはならない。だから、いくつも内定を得るのは不可能。大学の就活生とは大違いである。

 高卒者を採用する企業側はというと、ハローワークを通じ、高校に求人票を出す。企業は生徒とは採用選考まで直接やり取りすることができない。やはり大学の就活生とは異なる。

 また、内定を得た生徒は辞退しにくい環境下にある。学校が推薦しているためで、これも高校生独特だ。それでも辞退を強行すると、学校と揉めてしまうケースがある。違う企業を受けられる機会があるとしたら、最初に受験した企業に落ちた場合に限られる。

 高卒で就職した人ならご存じだろうが、そうでない人には分かりにくいはず。大学入試に例えると、指定校推薦に似ている。指定校推薦も学校の推薦を受け、1校のみ受験する。併願は出来ないし、合格後の辞退はタブーだ。

 この窮屈な高校生の就活の仕組みは「3者ルール」と呼ばれ、高度成長期の1960年ごろに確立した。その後、産業界の構造や求められる人材像は様変わりし、大学進学率は10%弱から50%強にまで伸びたが、このルールは生き残った。

 3者とは行政(厚労省、文科省)、高校 (学校長組合)、経済諸団体のこと。約60年前、高校側はこのルールだと、生徒の就活が比較的短期間で済み、学業に影響が出にくいと考えた。プラスと捉えた。生徒は内定も得やすい。ただし、それは1人で複数の内定をもらう生徒がいないのだから、当たり前である。

 一方、企業側からすると、このルールなら採用コストが抑えられる。なにしろ高校があらかじめ応募者を絞ってくれるのだから。選考の手間を大幅に省ける。内定辞退がないというのも大いにプラスだ。

 もっとも、近年は3者ルールのマイナス面が顕在化していた。制度疲労が起きていた。その一つが、早期離職者が続出している問題だ。

 その割合を大卒者と比べてみたい。

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