「この人たち、超人だな」 訪問入浴サービスの手際に感嘆した日──在宅で妻を介護するということ(第7回)

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風呂に入れるのではなく、お湯に浸す

 ゴト、ゴト、ゴト。台車に目いっぱいの機材(バスタブ、給湯・排水用のホース、床に敷く防水マット、シャンプーなどの入浴剤、たくさんのバスタオル類)を積んで彼らはやって来た。スタッフは3人。入浴介助を行う女性リーダー(看護師)、それをサポートする女性、そして機材搬入や水回りのセッティングを行う男性。私は邪魔にならないようキッチンに引っ込み、リビングが風呂場に変わる様子をずっと見ていた。

 まず、女性2人が風呂場となる床部分に防水マットやタオルを敷く。その上に2分割されたバスタブを置き、連結部の金具を締めて1つの大きなバスタブにする。心配していたスペースだが、多少斜めにすることでノー・プロブレム。「まだいいほうです。もっとずっと狭いお宅もありますが、不思議なことに何とか入るものですよ」と言われた。

 この間男性は、給排水の準備をする。ユニットバスの蛇口とホースをつなぎ、適温の湯がバスタブに供給されるよう調整し、バスタブ底部から出たもう一方のホースをユニットバスの排水口に差し込み、ポンプを介して排水する。男性は次に、四角い金属製フレームを組み立て、バスタブの上に据え付け、これにシートのようなものを装着して準備完了だ。

 そうか、われわれが風呂に浸かるように全身をバスタブに入れるのではなく、シートのようなものに寝かせてそのままお尻、背中、お腹までというように、少しずつ沈めていくのだ。ハンモックに寝かせたまま上げ下げするようなもの。なるほどこれなら安全だし、身体の隅々まで洗う人の手指が届く。うまく考えられていると思った。

 ベッドからバスタブまで運ぶときがまた興味深かった。バイタルチェック(血圧、脈拍、注意事項などをチェックする)を終え、おむつを外してお尻を綺麗にしたところで、身体の下に等身大のタオルを差し入れる。そのタオルの両端を、3人のスタッフが頭・腰・脚に分かれて持ち、そのままイチ・ニッ・サンの掛け声とともに持ち上げ、バスタブのシートまで運ぶのだ。運ばれる妻の様子はまるで芋虫のよう。あらためて身体が不自由であることを実感させられた。

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