安倍首相のコロナ対策に随分助けられてきた「文政権」は辞任にショック

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とにかく評判の悪かった首相の辞任に

 文政権の支持率は71%をピークに落ち込んでいた。元慰安婦の告発や大統領の盟友のセクハラ疑惑と休止、不動産政策の失敗などがその原因だ。しかし、危険水域と言われる40%以下に落ち込まず回復基調に。韓国で評判の悪い安倍晋三首相の「コロナ失政」に焦点を当てた報道が続く中で、相対的に支持率を戻してきた格好なのだ。在韓ジャーナリストによるリポート。

 安倍首相が辞任する。このニュースは、29日に開かれた記者会見前の午後2時半ごろ、辞任の意向を固めたというNHKの報道を受けてすぐ、韓国メディアも大きく報じた。

 この数週間、安倍首相の健康不安説が浮上し、韓国メディアも興味津々で注目していた。

 そのため、今回の辞任発表は韓国で全く予想できていなかったというわけではない。

 だがそれでも、第一次安倍政権のときも健康不安を理由に総理の職を辞しており、またもや同じことが起こるという予想はあまり現実的でないとされていた。

 韓国で竹島(独島)研究の第一人者とされる世宗大学の保坂祐二教授でさえも、記者会見の前日に出演した報道番組のなかで、「とりあえず続投して、頃合いを見計らって辞任を発表するでしょう」とコメントする程度だった。

 安倍首相の辞任劇は、戦後最悪と言われている日韓関係に少なくともそれなりの変化をもたらすことになる。

 なぜならば、安倍首相といえば、韓国ではとにかく評判が悪いからだ。日本を批判するときは「アベ」という音が必ず聞こえてきた。

 今回の辞任報道でも、「よかった!」という安堵感や、隣国の宰相の苦しみは蜜の味だと言わんばかりの、この目を疑いたくなるような書き込みがネット上で後を絶たない。

支持率が落ち込まなかった理由とは

 とはいえ、青瓦台は恐らく、そうした紋切り型の安易な満足に浸ってはいないだろう。なぜならば、逆説的な言い方かもしれないが、文在寅政権は安倍政権にずいぶん助けられてきたからである。

 文政権の支持率は、5月第1週の71%をピークに徐々に落ち込み、8月第2週には39%にまで落ち込んだ。しかし、その翌週にはジワリと上昇している。

40%を切ると危険水域だと言われているが、それがわずか1週間で回復の兆しを見せているのだ。

その間の韓国では、文政権に逆風が吹き荒れていた。

元慰安婦のおばあさん李容洙による慰安婦支持団体への告発があり、文大統領の盟友でもある朴元淳ソウル市長のセクハラ疑惑と急死、さらに不動産政策の失敗や、それに伴う青瓦台秘書官の辞任発表など、政権への打撃となるイシューが相次いだ。
 
だが、それにもかかわらず、支持率がなかなか危険水域に落ち込まない。
 
そうした背景として、韓国政府による新型コロナ対策が成功したという考え方がある。

文大統領の支持理由として一番多くの人が挙げるのが、コロナ対策への高評価だ。全体の30%を占めている。

だから、コロナ対策の成功が際立てば、文大統領の支持率は上がる。このところの再流行で、1日の新規感染者は400人前後になっているが、韓国政府は飲食店の営業は夜9時まで、コーヒーショップはテイクアウトのみに制限すると、いち早く対策を打ち出した。

 ただし、文政権のコロナ対策が評価されているのは、単純に成果を見せているからだけではない。

韓国メディアが日本のコロナ対策を詳細に報じ、その失策ぶりに焦点を当てていることも影響している。

3月には日本のコロナ対策が遅れているという報道が流布され、7月には「Go Toキャンペーン」による感染の拡散がクローズアップされている。

 このような報道は、構造的に、文政権の支持率向上に貢献する。

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