日本がインドネシアに500億円の支援を決定 高速鉄道とコロナの裏切りで募る不信感

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 7月20日、日本政府はインドネシア政府の要請を受ける形で、20億円の無償資金協力と最大500億円の円借款を決定した。名目は新型コロナウイルスの感染症対策および医療体制支援で、円借款は金利0・01%で償還期間は15年だ。東南アジア情勢に詳しいジャーナリストの末永恵氏は、この“思いやりODA”に疑問を呈する。

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 8月23日現在、人口およそ2億7000万人のインドネシアのコロナ感染者数は15万1498人、死者数は6594人(新規感染者2037人)。発表値をそのまま信用できないとはいえ、5倍以上の人口を抱える中国の感染者数が8万9645人、死者数4711人であることを鑑みると、アジア地域で最悪レベルを更新中だといえよう。しかもインドネシアのこの公表値は少なく見積もられている指摘もあり、現地有力誌『テンポ』は「(実際の)死者数は約5倍」と報じている。

 8月に入っても1500人から2000人を超える勢いで連日右肩上がりで増え続けるコロナの感染者と犠牲者数は、ジョコ・ウィドド大統領(以下、ジョコウィ大統領)政権の最大かつ最も困難な政治課題となっている。現地紙『コンパス』が先月発表した国民アンケートでも、約90%が「政府や閣僚のコロナ対策に不満を抱いている」と答えていた。だからコロナ支援を目的とした日本からの巨額ODAは、政府にとって願ったり叶ったりだろう。対東アジアや東南アジアなどへのODAを審査・担当する外務省国別開発協力第一課の渡邊滋課長は、インドネシアへの支援の意義を次のように筆者に語った。

「感染拡大防止への援助は、インドネシアの社会、経済回復を助けるとともに、日本への感染輸入予防や緩和においても重要だ。今回のコロナの緊急支援による同国への資金協力は、ODAの利率も最低レベルで、ほぼ無償と言っていい。2000社を超える日系企業が展開する同国の経済を下支えすることは、日本経済にとっても有益だ」

 今回のODAに関しては、日本が最大出資国であるアジア開発銀行(ADB)との協調融資で、同銀行からもさらに15億ドルが拠出されることになっている。同銀はコロナ支援で、アジア10ケ国への融資を計画しており、インドネシアは正式決定した最初の国になる。

 だが、日本とインドネシアの間にはこんな因縁もある。

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