金正恩から金与正へ…諜報機関も認め、加速する北の権力構造大転換のワケ

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可能な限り、北朝鮮の機嫌を損ねないように苦心する文在寅政権

 諜報機関である韓国の国家情報院(以下、情報院)は20日、金正恩が妹の金与正労働党第1副部長に国政運営の権限の一部を委譲するなど、「委任統治」に入ったことを発表した。このことは何を意味するのか、背景には何が隠されているのか、北で博士号を取得した専門家キム・フンガン氏の深層リポート。

 今回の委任統治は、分野別に権限を委ねるやり方で、金与正は対南・対米戦略を担当することになったと、情報院が初めて認めました。

 情報院の同日の発表は、私が今年4月から北朝鮮の統治権力構造の異常に関し、繰り返し報じてきた内容と概ね一致していると思われます。

 可能な限り、北朝鮮の機嫌を損ねないように苦心しているのが文在寅政権の特徴です。北朝鮮が拒否反応を見せるかもしれない統治権力関連情報を公開するのは、金兄弟の権力分割の実態が無視できない段階に来ていると捉えているからでしょう。

 これまで政府や情報院は、「金正恩は健在であり、その統治能力は正常だ」と一貫したスタンスで、金正恩政権にとってのネガティブな情報公開を避けてきました。しかしながら、「金正恩の統治能力は正常ではない」という事実が確認され、これを発表したわけですから、韓国政府は対北政策や南北関係全般にわたり、新たな転換点に立たされたといえます。

 ところで情報院は、北が統治権力を分割して委任統治を行うようになった動機として、金正恩の統治ストレスの軽減や政策失敗による責任分散によるものと分析しています。

 金正恩は対米関係と南北関係で主導権を握ろうと、今年4月までは旺盛な活動をアピールしてきました。今年だけでもSLBM搭載可能な戦略潜水艦の開発、長距離砲の射撃訓練、経済分野における活発な現地指導などを積極的に進め、ストレスを感じるどころか、ストレス解消する目的であったと思われます。

 ですので、金正恩がストレスにより統治権力に興味を失っているという指摘には納得できません。

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