プロ野球、コロナ感染恐れて観戦せず…チケット転売が横行で球団公認リセールを

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急な予定やコロナ感染回避で余ったチケットはどうすればいいのか?

 出品者側にも、転売が法に触れたりプロ野球の約款違反にあたったりするとの認識があるのか、出品するチケットの写真では主催者等にばれないよう、席番号を黒塗りにしているケースも散見される。

 オークションサイトでは、価格の歯止めがきかず、価格が正規販売された値段の何倍にも膨れ上がる恐れもあるため、転売者が多額の利益を得たり、金持ちだけが購入できたりするという状況につながりかねない。こうした点を考えると、多くのファンの球場での公平・公正な観戦の機会を確保する上で、営利目的とした悪質なチケット転売行為が法的にも道義的にも許されないのは言うまでもないだろう。

 では、チケットを購入したものの、急遽予定が入ったり体調を崩したりして球場に行けなくなった場合や、このコロナ渦の中で感染を恐れて来場を控える場合、余ったチケットはどうすればいいのか。

 いくら入場制限を設けているとはいえ、5000人もの観客が集う球場、帰宅時の最寄り駅での人混み等を考えると感染のリスクは完全には払拭できないため、やはり球場には行きたくないというファン心理も十分理解はできる。

 残念ながら、現状ではこうした「個人的な事情」で観戦に行かない場合、前述の通り払い戻しは認められておらず、転売も禁じられているため、約款の例外規定にあるよう、手元に残ったチケットは、原則としては知人らに無償譲渡するくらいしか活用方法はない。

日ハム、千葉ロッテ、オリックスは認めた

 ただ近年では、年間の席を一括購入するシーズンシート購入者を中心に、行けない試合のチケットを転売したいという声や、正規販売で完売したチケットをどうしても入手したいという声は大きくなりつつある。それを背景に、各球団公認のリセールの仕組みを導入すべきとの議論が高まってきているのも事実だ。

 さらに、前述したチケット不正転売禁止法が施行されたことで、以前までは法的にもグレーだった転売行為が明文化されるなど、リセールの仕組みを導入する上での環境整備も進んできた。そこで実は今年から北海道日本ハムファイターズ、千葉ロッテ、オリックス・バッファローズの3球団は、チケットストリートサイトの運営会社と契約を締結し、同サイトでは「球団公認」でのリセール、実質的な転売行為を認めるようになった。

 一方で、チケットストリートをはじめとしたチケット転売サイトでは、リセールを公認している一部球団の主催試合以外でも、プロ野球の試合チケットの転売情報が大量に確認できる。8月12日にチケットストリートをみてみれば、リセールを公認している千葉ロッテなどの30件前後に比べると少ないものの、人気球団の読売巨人軍や阪神タイガースの主催試合は転売情報が十数件に上っているといった状況だ。

チケットの転売のあり方、球団公認のリセールの仕組みについて

 確かに、営利目的とした「悪質な転売」と、コロナ感染を恐れたり体調を崩したりすることによる「やむをえない転売」との見極めは容易ではなく、リセールの公認に各球団が慎重になるのは当然だろう。

 まして、転売行為について「球団公認リセール」というお墨付きまで与えると、悪質な転売者がそこを逆手に取って、より巧妙に転売活動を本格化させ、多額の利益を得る可能性だってありえる。

 とはいえ、一律に転売禁止としてしまうと、熱心なファンの「球場離れ」「野球離れ」を引き起こしてしまう恐れもある。いまだに猛威を奮うコロナを考えると、転売についてはもっと柔軟な対応が必要となってきているのではないだろうか。

 例えば、「リセールで許される価格の上限は、正規販売価格の同額まで」「リセールできる枚数は1か月2枚まで」などの一定のルールを設けた上で転売を認めれば、悪質な転売行為との差別化も図れるだろうし、現実的ではないか。

 コロナ渦を契機に、球界全体がもっとチケットの転売のあり方、球団公認のリセールの仕組みについて、議論を深めるべきだ。

週刊新潮WEB取材班

2020年8月14日掲載

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