「情熱大陸」出演、「2500匹を探し出した」ペット探偵が語る「私の野良時代」

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

Advertisement

スゴ腕のペット探偵

 8月9日の「情熱大陸」(TBS系列)に出演したペット探偵の藤原博史(51)さん。「ペットがいなくなりました」と電話を受けると、現場に駆けつけて捜索にあたる仕事ぶりがフォーカスされた。

 これまで発見に至ったのは2500匹にのぼり、約7割の確率でペットを家族の元に戻す――その実績に驚くと同時に、「こんな仕事があるのか」と新鮮に感じた視聴者も多かったのではないだろうか。

 藤原さんは1997年、ペットを専門に捜索する会社を神奈川県に設立。依頼があれば猫はもちろん犬や鳥、ウサギにフェレット、爬虫類や昆虫まで捜索を請け負ってきた。全国各地に出張しながら一匹ごとに異なる失踪状況や性格などを細かく分析し、居所をつかんでいく。暑い日にも寒い日にも、手掛かりを求めて歩き回る。

 かなり過酷とも思える仕事をなぜ選んだのか。なぜ高確率でペットを発見できるのか。藤原さんによると、生き物を友だちとしていた自身の「野良時代」に学んだことが大きく関係しているという。その風変わりな半生を、近著『210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ ペット探偵の奮闘記』からご紹介してみよう。

「神戸で生まれ育ち、もの心ついたときからずっと虫や動物に興味がありました。地面を這いずり回るようにして虫を探し、追いかけ、すっかり同化してしまうのです。

 家でもいろんな生き物を飼っていました。アリやチョウ、クモ、カブトムシなどあらゆる虫を捕まえると、お菓子の空き箱などを使って飼育するのです。

 小学校へ通うようになると、いろんな生き物を連れて行きました。常にポケットにヘビやトカゲなどを忍ばせていたので、授業中にそれが逃げ出して、クラス中が大騒ぎになることも日常茶飯事です。

 もちろん犬や猫にも興味を持ちました。給食で出るパンは必ず残しておき、野良犬にあげるために持ち帰ります。それを机に隠していたら、何日も貯め過ぎてカビを生やしてしまい、ついに机の中に教科書が入らなくなったことも。

 先生に見つかって、授業参観の日にすべて引っ張り出され、『こんなことをしている生徒がいます!』と叱られたのは苦い思い出です」

路上生活する中学生

 こんな子どもなので、小学校の卒業文集には「なにか動物にかかわる仕事につきたい」と綴っていたが、反抗期に差し掛かりいわゆる不良少年に。

 家庭訪問にやってきた中学校の担任には「もう学校には来ないでくれ」と言われる始末。結果本当に、登校をやめてしまった。何となく居づらくなって家出をすると、ヤクザになった先輩のもとへ。そこにも居づらくなると、外で野宿するようになったという。

「夜は車の下で寝たり、屋根がある駐車場など雨風を避けられる場所を見つけます。閉店後のショッピングセンターに潜り込み、ペットコーナーの大型犬の小屋の中で寝泊まりすることもありました。冬場はそこで何とか寒さをしのげたのです。

 食事はスーパーの試食コーナーに容器を持っていって総菜をもらったり、コンビニへ行ってはゴミ箱をあさって、廃棄された弁当を食べたりしていました。

 そんなホームレスのような生活をなぜ望んだのでしょう。振り返ればいろいろ理由があるとは思いますが、あの頃はただ外での生活が楽しくて、家へ帰りたいという気持ちがまったくなかったという感じなのです。好奇心旺盛な時期に何でも自分の好き勝手にできることがとても快感でした。

 外の世界は何もかもが刺激的で、出会う大人も凄い人たちでした。私は年齢をごまかして葬儀社で雇ってもらったり、ゴルフ場のキャディのアルバイトをしたりと、“生きる力”を発揮していました」

犬や猫に教わった知恵

 まさにホームレス中学生となったのだ。

そんな藤原さんの傍には、常に生き物たちがいたという。

「車の下や駐車場の片隅で寝ていると、そこから見える街の風景や行きかう人の足は巨大で、そびえ立っているようです。さらに見ていると、犬や猫の目からは常に、私たち人間の世界がこんな風に見えているのだと気づきます。

 どんな場所なら雨風をしのげるか、安全に身を隠すのには最適かも、犬や猫に教わりました」

 その後はフランス料理のウェイターや沖縄のクルマエビ漁師、宅配便の荷分け作業など、職を転々とした後に、「ペット探偵」という仕事に行きつく。

「捜索の現場に出ると、不思議とどんな状況も辛くはありませんでした。炎天下や冬の厳しい寒さの中、黙々と外を歩き続けることも苦になりませんし、パニック状態になっていたり、話すのもやっとというほど憔悴した飼い主さんとのやりとりがしんどいと感じることもありません。それは20年以上が経った今も変わらないのです」

 野外で鍛えた身体、地べたで培った目が活きる、まさに天職にめぐり合えたということか。今日も藤原さんは、日本のどこかで、ペットと飼い主の再会を叶えるため力を尽くしている。

藤原博史(ふじわらひろし)
ペットレスキュー代表。1969年生まれ。迷子になったペットを探す動物専門の探偵。97年に「ペットレスキュー」を設立し、ドキュメンタリードラマ「猫探偵の事件簿」(NHK BS)のモデルにもなった。

2020年8月10日掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。