韓国はキャッシュレス超大国と胸を張るけれど…おひざ元の通信網は脆弱で

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キャッシュレスの脆弱性が露呈した、通信大手KT火災

 2018年11月24日、キャッシュレス文化の脆弱性が露呈した。通信大手KTの支社で火災が発生し、ソウル市内の5つの区と隣接する高陽市でシステムがダウンしたのだ。

 KT回線を使用している店でキャッシュレス決済ができなくなり、現金を持っていない人は買い物や食事ができなくなった。銀行のATMもKT回線を使用していたため、現金を引き出すこともできなかった。

 火災発生は土曜日だったこともあり、企業の被害は最小限に抑えられたが、火災現場から2.8キロメートル離れた新村セブランス病院は院内のコンビニや食堂に加えて、駐車場もキャッシュレス決済ができなくなった。現金を持っていない利用者の車が駐車場から出られなくなったのだ。病院は現金を持っている利用者からは料金を徴収し、現金を持たない車はそのまま出させたという。

 同病院はほかにもKTの通信網を使用している院内のコールフォンが不通となり、救急室や集中治療室などに影響が出た。火災現場から7.7キロメートル離れた順天郷大学ソウル病院もシステム障害で救急室を閉鎖した。さらに日本の110番に相当する警察署の112番通報が一部不通となり、国防部と米軍を結ぶ回線も途切れ、軍と青瓦台(大統領府)を結ぶ通信回線にも支障が出た。

 モバイル化を加速したい韓国は2019年4月5日、世界に先駆けて次世代通信規格5Gの商用サービスを開始した。米通信会社が同月11日に5Gサービスを開始すると発表し、急遽、開始を繰り上げたが、5Gの最大通信速度20 Gbps(ギガビット/秒)には、はるかに及ばない2Ggpsにとどまるスタートだった。

 KTは代替回線がなかったことから火災で通信網がダウンし、5Gも脆弱なインフラが原因で本来の性能を発揮していない。

 5G対応のスマートフォンを世界で販売するサムスン電子の足を引っ張るのは、輸出管理を強化した日本より、むしろお膝元の通信網なのである。

佐々木和義
広告プランナー兼ライター。商業写真・映像制作会社を経て広告会社に転職し、プランナー兼コピーライターとなる。韓国に進出する食品会社の立上げを請け負い、2009年に渡韓。日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える必要性を感じ、2012年、日系専門広告制作会社を設立し、現在に至る。日系企業の韓国ビジネスをサポートする傍ら日本人の視点でソウル市に改善提案を行っている。韓国ソウル市在住。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月31日掲載

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