北朝鮮のコロナ流行の実態…脱北したのに敢えて北へ戻った”感染源”青年の告白

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泳いで脱北した若者が、再び泳いで北に戻るまで

 さて、今回の当事者である脱北男性はキム・グンヒョクさんと言います。彼は7月27日、漢江河口を泳いで再び北朝鮮に戻りました。

 今年で24才になる彼は開城出身。3年前、開城の白馬山から見える韓国の夜景が“眩しく”て、友人と一緒に5時間も泳いで韓国に脱北したのです。

 ソウルに来て持病も治療、大学入試の準備をしながら希望に満ちあふれていたはずの若者が突然、北朝鮮に戻った……。このニュースには脱北者のみならず韓国の人々も首を傾げています。なぜ彼は北朝鮮へ戻る選択をしたのでしょうか。

 知人らの証言によると、特別な関係にあった知人女性に性的暴行を加え、警察から調査を受けている最中であったとのことです。韓国の刑務所に行きたくないため、北朝鮮へ戻る道を選んだということになりますが、本当にそうでしょうか。

 北に戻る前、キム君はマンションを解約し、車を売ってお金を工面していました。金さえあれば故郷で減刑されると思っていたのでしょうか。

 そんなことはありません。北朝鮮では民族反逆者、脱北者に対して、5~10年の厳しい刑が待っていることを彼が知らないはずがない。

 刑に服すなら韓国か北朝鮮か。彼が選んだのは北朝鮮です。しかし、北朝鮮の教化所(刑務所)で懲役に服し、五体満足で戻って来た囚人はいません。矯正環境が劣悪なだけでなく、毎日のようにきつい労働と教導官による無差別殴打、体罰がある。最小限の食事しか与えられずに栄養失調になり、下手をしたら命を落とす。最後まで生き残って出所できたときの安堵は格別なものがあると体験者たちはみな言いますけれど、そうだとしても、その後は「脱北した不穏分子」のレッテルを貼られ、幸せな人生を送れるとは思えません。

 一方、韓国の刑務所では自由が制限されているとはいえ、衣食住は保障され、領置金さえあれば必要な物は手に入る。いわば宮殿監獄生活を送ることができます。

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