「藤浪晋太郎」と「藤川球児」の復活が“阪神優勝”に欠かせないこれだけの理由

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 開幕からの4カードで2勝12敗と大きく負け越したものの、その後は見事なV字回復で上位に浮上してきた今年の阪神。課題の打線も新加入のボーアとサンズ、7月から4番に座り好調を維持している大山悠輔の活躍などもあり、昨シーズンと比べても上向いていることは間違いない。また開幕から不振だったリードオフマンの近本光司が復調してきたことも大きなプラス材料だ。

 しかし、その一方で強みと見られていた投手陣が不安定なのは気がかりである。特に深刻なのがリリーフ陣だ。昨年は2点台だった救援防御率が、今シーズンは7月26日終了時点で4.87と大幅に悪化している。ちなみにこれはリーグでも5位の数字である。そういう意味でまずキーマンと言えるのが抑えの藤川球児だ。開幕から登板した5試合のうち4試合で失点を喫し、7月12日には右肩のコンディション不良で登録抹消となっている。その後23日には一軍登録され、26日の中日戦では7回の1イニングを0点に抑えて勝ち投手となったが、いまだに本調子とは言い難いのが現状だ。

 ただそんな藤川を抑えから簡単には外しづらい事情がある。名球会入りとなる日米通算250セーブまであと5に迫っているのがその理由だ。阪神に在籍している投手が名球会入りとなるのは1970年の村山実以来、実に50年ぶりのこととなる。この大記録達成を球団が後押しすべきという意見も多く、首脳陣にとっては頭の痛い問題と言えるだろう。

 藤川の調子が戻ることが一番の解決になるが、今年で40歳という年齢と、多くの試合が雨天中止となったことによる今後の過密日程を考えると、厳しめの予測をしておくことが妥当だろう。日米通算250セーブが達成された段階で、他の抑え投手を用意しておく必要があると考えられる。

 ここまではソフトバンクから新加入したスアレスが代理で抑えを務めているが、コントロールに不安があり、また故障歴を考えてもフル回転させることは難しい。新外国人のエドワーズも候補になるが、外国人枠の都合で常に一軍ベンチに入れることは簡単ではないだろう。

 将来のことを考えても日本人の若手で抑えとセットアッパーをある程度任せたいところだが、その有力な候補となるのが望月惇志と馬場皐輔の二人だ。望月の魅力はコンスタントに150キロを超えるスピードボール。ここまでまだ負け試合での登板が続いているが、ストレート主体に抑えることができている。三振を奪える変化球は課題だが、そろそろ勝ちパターンで起用しても面白いだろう。

 馬場は2017年のドラフト1位ながら過去2年間は二軍暮らしが続いていたが、今年は7月から中継ぎの一角として一軍定着を果たした。スプリットの精度が上がり、望月と比べても三振を奪えるのは大きな魅力だ。場合によっては抑えを任せても面白いだけのポテンシャルを秘めているだろう。またルーキーのため過剰な期待はかけられないが、ドラフト6位の小川一平も来年以降この二人に続いてもらいたい好素材の投手である。

 そして、投手陣で優勝に向けてのキーマンをもう一人挙げるとすると、やはり藤浪晋太郎になるだろう。昨年はプロ入り以来初の0勝に終わり、今年も開幕から二軍での調整が続いていたが、7月23日の広島戦でようやく一軍復帰を果たした。結果は6回にピレラに逆転満塁ホームランを浴びて負け投手となったものの、5回までは68球で無失点としっかり試合を作ったことは自身になったはずだ。投じた106球のうち実に78球がストレートだったが、その平均球速は150キロを超えており、改めてその球威を見せつけている。

 また、もう一つの武器であるカットボールのコントロールも昨年と比べてもだいぶまとまってきているように見えた。現在、先発投手陣は西勇輝と青柳晃洋が二枚看板となって安定した投球を続けているが、ここに藤浪が加われば他のセ・リーグ5球団と比べても大きなアドバンテージになることは間違いない。

 復活した藤浪が試合を作り、藤川の後釜となる若手リリーフ陣が終盤を締める。その形が見られた時、阪神は大きく優勝に近づくことになるだろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月30日掲載

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