“富士山噴火”で交通網崩壊、首都圏で大停電…驚愕のシミュレーション できる準備は

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こんな時に「富士山」が危ない!?(2/2)

 ここ数カ月、東日本から中部地方にかけて、緊急地震速報を伴う地震が何度も発生している。また4月、コロナ禍の陰で注目されなかったが、政府は富士山の噴火について警告のシミュレーションを発信していた。前回の宝永(ほうえい)噴火(1707年)からは300年以上も経過しており、もし富士山が今噴火すれば未曽有の災害となるという。実際に噴火した場合のシミュレーションと、我々にできる準備を紹介する。

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 東京大学名誉教授で、山梨県富士山科学研究所所長の藤井敏嗣氏はこう言う。

「いつ噴火してもおかしくないというのが、今言えることの全て。来年の今頃には噴火しているかもしれないし、何十年経っても大丈夫かもしれない。だからこそ、火口の範囲や溶岩流、火砕流や降灰の到達範囲など、あらゆる可能性を予測したハザードマップを作成する必要があると思います。その意味で、今年4月に政府の中央防災会議が発表した富士山噴火のシミュレーションは、火山防災において大きな進展でした」

 それが冒頭で述べた警告シミュレーションだ。3年前まで、気象庁の火山噴火予知連絡会の会長を務めた藤井氏は、富士山噴火の被害想定の必要性を訴えてきたとして、こう話す。

「このシミュレーションによって、前回の宝永噴火と同じ規模の噴火が起これば、数時間で富士山に近い山梨や静岡のみならず、首都圏一帯にまで大きな影響が出ることが分かった。これまでは、“桜島だってしょっちゅう噴火しているが、洗濯物が汚れるくらいでうまく共生できている。富士山も大丈夫じゃないか”などと楽観的な話をする政治家もいましたが、実際に富士山が噴火すれば、桜島の噴火で降る火山灰の約200年分が、たった2週間で堆積してしまうのです」

 コロナで緊急事態宣言が出たのと公表が重なり、ほとんど世間で触れられなかったこの「降灰シミュレーション」。それを基に作成したのが図1・図2である。図1は、偏西風の強い時(12月を想定)で、都心周辺を火山灰が直撃するのが分かる。図2のように南風が吹くと(9月を想定)、西は愛知や岐阜、北は新潟や福島などにも被害が及ぶ。

「噴火開始から数時間で、首都圏の交通機関はほとんど機能しなくなることが分かりました。レールの上に火山灰が0・5ミリ積もっただけで鉄道は運行できなくなる。地下鉄も、一部が地上区間を走行したり、私鉄に相互乗り入れしている路線が多いので、運行し続けることは難しいのです」

 と藤井氏は訴える。

 アイスランドで起きた火山噴火でも、欧州全域で航空機が運休したが、機体のエンジンに火山灰は大敵で、吸い込めば墜落の恐れもある。滑走路の清掃も追いつかず、噴火初日で羽田や成田などの主要空港は閉鎖に追い込まれる。

 公共交通機関がストップすれば、都市の道路は車で溢れるが、件のシミュレーションが記載された報告書によれば、〈乾燥時10cm以上、降雨時3cm以上の降灰〉で、タイヤに灰が固着して一般的な〈二輪駆動車が通行不能となる〉。

 最も深刻なのは、首都を支えるライフラインへの被害だ。東京湾一帯にある火力発電所は、6センチ以上の降灰で停止する可能性も指摘されている。発電装置に不可欠な吸気フィルターに灰が付着するためだが、その発電所から延びる送電線への影響も見逃せない。〈降雨時0・3cm以上(の降灰)で碍子(がいし)の絶縁低下による停電が発生する〉と警告されており、送電網までダウンすれば、西日本など他地域から電力融通が受けられない。「首都圏大停電」が起きる可能性があるのだ。

 となれば、上下水道も止まり“ステイホーム”もままならないが、肝心の我が家にも危機が迫るという。

 雨が降って灰に水分が加われば、〈30cm以上の堆積厚で木造家屋が火山灰の重みで倒壊するものが発生する〉というのだ。

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