「香港を殺した」中国の人権弾圧と膨張主義 次なるターゲットは尖閣、沖縄

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「香港無視」の背景に…

 確かにコロナ禍にも拘(かかわ)らず、しかもウイルスは自国発であったというのに、中国は反省するどころか、連日、尖閣諸島周辺に公船を寄越している。7月2日から3日にかけては30時間超にもわたって日本の領海に侵入を続けた。日本人の「常識」からすると、「コロナではご迷惑をお掛けしてしまい……」と、多少なりともおとなしくしそうなものだが、現下の中国の辞書には「自戒」や「遠慮」「謝罪」という言葉はないようだ。

 中国事情に詳しいジャーナリストの福島香織氏が分析する。

「2000年代に5年連続で2桁台の経済成長率を誇ったのに比べ、習近平政権ではそれが鈍化しています。加えて、コロナ禍の影響で失業者が急増し、食品物価が高騰するなど、中国国民の習体制への不満は高まりつつある。そこで為政者は、共産党体制が盤石であることを国内的にアピールする必要に迫られ、香港、台湾、ひいては日本にも強硬な姿勢に出るという流れになっているのです」

 中国出身の評論家、石平氏が続ける。

「中国は、各国がコロナ対策に追われ、弱っている状況こそチャンスだと捉えている。この機を逃さずに『出撃』して『前進』しようとしているのです」

 つまるところ、日本は香港の惨事を傍観している立場ではないのだ。ところが、日本国内の反応は鈍く、とりわけ影響力があり、最近政治的な動きを強めつつある芸能人たちの「無関心」が目に付くのである。

 結果的に検察庁法改正案を廃案に追い込む大きなうねりとなった、芸能人たちによる「#検察庁法改正案に抗議します」運動。この時に政治的に「覚醒」したはずの彼らは、どういうわけか、ある意味では検察庁法より深刻で極めて政治的な「香港の死」には声を上げようとしていない。

「検察庁法の時にはツイッターで政治的な反応を示した一方、今回は『だんまり』を決め込んでいる主な芸能人は、歌手のきゃりーぱみゅぱみゅ、俳優の浅野忠信、演出家の宮本亜門といったところでしょうか。彼らはいずれも中国で公演をしていたりと、巨大な中国市場と縁がある。そういったところも、『香港無視』の姿勢と関係しているのかもしれません」(芸能記者)

 各芸能人に見解を質すと、例えば宮本亜門氏の事務所はこう回答した。

「確かに香港の件では発言していませんが、宮本は演出家であり、法律家でもコメンテーターでもありません。全てのことにリアクションし、コメントしなければならないのでしょうか」

 それはそうだが、ならばなぜ検察庁法「だけ」に政治的に反応したのか、その答えにはなっていまい。

 楊教授はこう指摘する。

「本当に政治的意識が高いのであれば、それが日本であろうと中国であろうと、等しく声を上げなければ偽善と言われても仕方ないでしょう。中国は人口が多く、芸能活動においても動員力などの面でビジネスとして魅力的です。こうしたお金の事情が、芸能界から中国への批判が起きにくい背景にあるのかもしれません」

 地獄の沙汰も金次第。中国批判も何とやら……。

週刊新潮 2020年7月16日号掲載

特集「香港だけではない! 異形国家『中国』の『人権弾圧・膨張主義』」より

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