「香港を殺した」中国の人権弾圧と膨張主義 次なるターゲットは尖閣、沖縄

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 時に「有」より「無」が雄弁に物語ることがある。

 中国への警戒を怠らないことで知られる産経新聞の7月1日付1面トップの記事は、まさにその典型と言えよう。記事に写真は一切無し。代わりに背景が真っ黒に塗り潰されている。それは、ある地域が「暗黒時代」に突入したことを一瞬で説明するのに成功していた。その記事に付されたタイトルはこうだった。

〈香港は死んだ〉

 2020年7月1日、別名、暗黒法とでも言うべき「香港国家安全維持法(国安法)」が施行された――。

「暗黒法」施行の前日、香港の民主化を主張し続けてきた「雨傘運動」の象徴的存在で、同法施行前に身柄拘束された経験もある周庭(アグネス・チョウ)さん(23)は、SNSでこう表明した。

〈私、周庭は、本日をもって、政治団体デモシストから脱退致します。これは重く、しかし、もう避けることができない決定です〉

 現代の「女性闘士」ですら、こう「白旗」を掲げざるを得ないほど、国安法は苛烈な内容なのだった。

「香港独立」はもとより、オブラートに包んだ「光復香港(香港を取り戻せ)、時代革命(時代の革命だ)」とのスローガンでさえ、政権転覆の意味があるとして取り締まりの対象となってしまったのだ。しかも、違反すると最高で終身刑という厳罰が科される。中国共産党によって集会や言論の自由の欠片も認められず、香港は文字通り暗黒時代に突入したのである。事実、ある香港ウォッチャー曰く、

「国安法が施行された1日だけで、香港では約370人が身柄を拘束されました。また、国安法施行後の香港の街を取材していた記者にまで、放水が行われる恐怖政治が現実のものとなっています」

 こうした中国の暴挙に対して、当然、日本や英国など27カ国は「懸念」の共同声明を発表しているが、中国政府はどこ吹く風で、一層、香港での弾圧を強めている。ならば、やはりこう烙印を押さざるを得まい。「狼藉国家・中国」と。

 無論、その横暴ぶりは今に始まったことではない。自分たちこそが世界の中心であるという中華思想のもと、これまで中国は香港以外の地でも「とにかく俺の言うことを聞け」と、乱暴な実力行使を繰り返してきた。その卑劣な弾圧と膨張主義を検証することで、改めて彼の国の「異形」を浮き彫りにしてみる。

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