ボルソナーロ大統領でブラジルはカオス状態 コロナ感染者は今後も激増、軍事政権復活をのぞむ声
反民主主義デモ
自身がコロナに感染した後も、州知事による外出自粛を批判し、あくまで経済優先を貫き通すボルソナーロ大統領。だが、大統領府ではすでに100人以上の職員が感染している。ブラジル全体の感染者はアメリカに次いで多く、1日に4万人以上のペースで増えている。
「7月11日現在で感染者は180万人以上、死亡者は7万人を超えました。もっとも、実際の感染者はその6~7倍と言われています。というのは、ブラジルでは抗体検査を行っていて、サンパウロでは人口の約10%が抗体を持っていると言われています。サンパウロの人口は1200万人ですから、単純計算で感染者は120万人になります。ブラジルの人口は2億人ですが、地方都市ではサンパウロのように抗体率が高いとは思えないので、少なく見積もってもすでに1000万人以上の人が感染者したと考えられます」(同)
ブラジルの感染者は、大都市から地方へ広がっているという。
「ブラジルの面積は日本の約23倍もあります。地方には、満足な医療機関がないため、死者は今後も増え続けるでしょう。大統領は、集団免疫を獲得することを待っているようですね。そうすれば、第2波を心配する必要がありませんからね」(同)
とはいえ、集団免疫を獲得するまでには、かなりの犠牲者を伴うことになる。これでは大統領の支持者も離れていくような気もするが……。
「大統領の支持率は今年初めに50%近くありましたが、コロナの感染拡大の影響で30%くらいに落ちています。ただ、大統領の支持は依然として根強くあります。支持しているのは白人の富裕層で、彼らは今年の3月から6月にかけて反民主主義デモを行っています。“反連邦議会・反最高裁”を主張し、ブラジルの軍事政権(1964~1985年)の復活を訴えています」(同)
いまさら軍事政権とは……。
「ブラジルの民主主義では汚職が蔓延している。軍事政権時代は統率されていて汚職が少なかったというのが、軍事政権復活を望む理由です。ブラジルでは、今も国民の2割が軍事政権のほうが良かったと考えています。反民主主義デモには、大統領派の下院議員4人の議員割当金から約15万レアル(約300万円)が使われています。このデモには、大統領も時々参加し、閣僚に軍の経験者を次々に送り込んだことも、反民主主義デモを勢いづかせています」(同)
これに対して司法当局は、民主主義は憲法で規定されているので、反民主主義は憲法違反になると主張。さらに、デモに大統領派の下院議員の割当金が使われていたこともメディアに報じられ、デモは6月下旬に中止に追い込まれた。
「7月9日、米フェイスブックが大統領の2人の息子(上院議員と下院議員)や支持者のアカウントを削除しました。2人の息子と支持者は、オンライン上で大統領の反対派を中傷、さらにフェイクニュースを流した疑いがあったからです。彼らは『憎悪の司令室』と呼ばれるブロガーのグループと関係がありました。コロナ感染拡大を防止するため、外出自粛を呼びかけたサンパウロ州知事に『独裁者だ!』と投稿。外出自粛に反対する大統領と対立した最高裁判事を侮蔑するような投稿をしていたことも分かっています」(同)
ボウソナーロ大統領は現在、新党「ブラジル同盟」を結成準備中という。まさか本気で軍事政権の復活を目指すつもりではあるまい。
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