Jリーグ「柏VS.東京」のリモートマッチを実況中継 無観客のスタジアムに響いた声

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最も声を出していたのは?

 新型コロナウイルスの感染拡大により中断されていたJ1リーグが、7月4日、約4ヶ月ぶりに再開された。全国9会場で行われた試合は、感染拡大を防ぐため、「近隣同士のクラブの対戦」、「無観客試合」、「交代枠は5人」、「試合中の唾吐き禁止」、「取材メディアの制限」など選手を守るため様々な対策が講じられた。

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 Jリーグの無観客試合を取材するのは2度目となる。最初は村井満チェアマン(60)が就任した2014年、浦和対鳥栖戦で浦和のゴール裏サポーターが「JAPANESE ONLY(日本人以外お断り)」という横断幕を掲げたからだった。

 これが人種・民族の差別に当たるとして、村井チェアマンは浦和に対し第4節のホーム清水戦を無観客試合とする制裁処分を科した。

 Jリーグではもちろん初めての処分。今回のコロナウイルスで1試合を消化した時点で中断を決断したように、当時から村井チェアマンの決断は早かった。

 ただ、当時の浦和対清水戦は観客こそいなかったものの、その他は日常通りだった。「無観客試合」は制裁のイメージが強いとして「リモートマッチ」という名称が新たに誕生したが、4日の柏対FC東京戦は何もかもが初めての体験だった。

 3密を避けるため、取材陣も記者は1試合25名、カメラマンは16名と制限され、受付は1時間前からで、もちろん検温で発熱が確認されれば入場はできない。記者、カメラマンのワーキングルームは使用禁止で、記者席も6人掛けに2人と十分な距離を取っている。

 いつもなら試合前に多くのファン・サポーターで賑わうスタジアムグルメもなければ、当然観客の姿もない。当初、村井チェアマンは、リモートマッチを可能な限り避けようとした。というのも、スタジアムグルメを始め臨時駐車場、警備員や誘導係、地元飲食店にコンビニなど、Jリーグは多くの雇用を創出しているからだ。

 試合がなくなれば、彼らの収入も途絶えてしまう。特にそれは地方都市のクラブに関わる人々にとって切実な問題であり、それを村井チェアマンも危惧していた。

 幸いにも7月10日から観客を入れての(当面は5000人もしくはスタジアムの50%という制約付きだが)試合に戻る。クラブにとってもスタジアムでの飲食(特にビール)は大きな収入源だけに、これ以上感染が拡大しないことを願うばかりだ。

 一方、選手はというと、PCR検査と検温が義務付けられ、ピッチに入場する際もこれまでのように1列に並ぶのではなく、準備が整った選手から三々五々出てきた。

 集合写真の撮影も、あらかじめピッチ上に配置されたマーカーの上に立ち、間隔を開けることで密になることを避けている。握手の代わりは二の腕のタッチで済ませて試合が始まった。

 リモートマッチでまず感じるのは、ファン・サポーターの声援がないため選手の声がよく聞こえることだ。とりわけ三協フロンテア柏スタジアムはサッカー専用でピッチと観客席が近い。

 サッカー界では「後ろの声は神の声」と昔から言われているが、その言葉通り一番声を出しているのは最後尾に位置するGKだった。

 例えばFC東京のGK林彰洋(33)は、守備の際にフィールプレーヤーに積極的にボールを奪いに行くような時は「ゴー、ゴー、ゴー」。逆に守備陣が手薄で味方の戻りを待つため時間を稼ぐ時は「ディレイ」ではなく「ゆっくり!」と大声を出していた。

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