倒産「ミネルヴァ法律事務所」代表が懺悔の独占告白 「私を洗脳した“真犯人”がいる」

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「会長は神、ゴッド」

 いかなる事情があるにせよ、弁護士がこのような経理を放っておけるのか。

「私は51億円の負債を認識する前から、負債が膨らんでいると予測していても児嶋会長に強い態度に出られませんでした。強引に事務所を解散させたとしても、弁護士法で定められた無限連帯責任によって、代表である私がそのすべてを負わなくてはいけません。私も家族があるので、そう簡単に破産させるわけにはいかず、どうにか再建の道を探りたい。そんな思いがあったのです。もちろんLVグループ内に相談できるような相手などいません。会長が君臨しているからです。たとえば、年末の社内研修会。忘年会と会長の誕生日祝いを兼ねて熱海の後楽園ホテルへ行きます。LVグループ約120名がバス3台で行くのですが、車内で皆、会長から酒を飲まされ、ひたすら一気飲み。当然、潰れる人も出ますが、それでも夕方にはホテルの大広間で誕生日祝いをやる。ここでも一気飲みです。この宴会の様子をみれば、会長に意見するLV関係者は皆無だと分かります。ゆずの『栄光の架橋』が社歌で、みんなで肩を組んで大合唱して終わるのですが、その前に、ビデオ上映があります。これがまた凝っている。昨年末は、会長を主人公に仕立てた、『情熱大陸』のよくできたパロディビデオが流されました」

 ロゴやテーマ曲はそのまま、ナレーションまでホンモノそっくり(写真1)。児嶋会長の出社風景から、社内での社員との会話、酒席での一コマなどで構成されている。会長評を訊ねられた社員たちは、〈会長は神だね。神。ゴッド。言われたことをそのままやれば、何でも成功するよ〉〈お客さまへの愛情が半端ないです〉などと最大級のヨイショ。その礼賛ぶりはうすら寒くなる。

 児嶋会長が会社の展望を語ってこの“ニセ情熱大陸”が終わると、「スペシャルメッセージ」の文字。男性7人がずらりと並ぶ画となる。DA PUMPだ(写真2)。

〈児嶋会長! お誕生日おめでとうございます!〉

 と、ISSAが祝福し、

〈俺らみんな会長に世話になってますから。しかもね、ツアーにもね協賛していただいて。ぼく、サウナ仲間なんで。週にぼく、4回ぐらいは会います〉

 と親しさをアピール。そのあいだISSA以外のメンバーは、顔に笑顔を張りつけもみ手をしている。LVグループ社員や川島弁護士に会長の交友関係の広さを認識させる効果はバツグンだろう。この社内研修会からは、ある種、宗教じみたモノが感じ取れる。川島弁護士によれば、

「児嶋会長の交友関係といえば、他にはフジテレビの関係者が多いことは周辺の人はみな知っています。有名なプロデューサーやアナウンサーと飲みに行ったとかLINE友だちだと会長自身が話していますし、その関係でお台場のイベントに協賛したこともある。政界では小沢一郎さんの子分だった糸川正晃元民主党代議士を応援していました」

 実際の関係はどうなのか。DA PUMPが所属するライジングプロダクションの広報担当者はこう答えた。

「一昨年、関係者の紹介で児嶋さんとの関係ができました。たしかにISSAはサウナで一緒になることはありますが、プライベートのお付き合いはない。児嶋さんサイドから“誕生日おめでとうコメント”を、と打診があったので、協賛していただいた関係上、メッセージを出させていただきました。それだけです」

 とはいえ、単独公演の協賛金として520万円の提供を受けているではないか。糸川元代議士は、

「私が19年参院選に自民党から出馬したときに知人の紹介でお会いしまして。応援してくださるとのことだったので、“150万円ほどお願いしたい”と仄めかしたところ、まとまった額は厳しいとのこと。それで児嶋さんのグループ会社の顧問にしていただきました。以来、月10万円の顧問料をいただいています。ミネルヴァの倒産に悪い形で関与しているのなら、お付き合いを考えないと……」

 と、のたまう。

「そうはいっても、児嶋会長はすごく腰が低くて、人たらしの面がある。ふだんも、私が“カワちゃんが代表になって売り上げがよくなった”とか、“みんな喜んでいるよ”と褒めてくる。いま思えば、私は“洗脳状態”にあった気がします」

 いまも、川島弁護士にそう言わしめる児嶋会長に話を聞いた。

「川島さんが言っているのはウソ。ミネルヴァのお金を私が勝手に動かせるわけがないじゃないですか。広告費にしても川島さんがきちんと決済していましたよ。私は、ミネルヴァと広告のコンサルとしてのお付き合いしかしていません。未払金があって、迷惑しているのはこちらなんです」

 と、不敵な笑みを浮かべる。最後に川島弁護士の話。

「私は人を助ける仕事がしたくて弁護士を志(こころざ)しました。細々とでもいいから、依頼者の一人ひとりに“相談してよかった”と思ってもらえる仕事をしたいと考えていました。負債額を知って、それを思い出した。一弁からの懲戒請求で弁護士資格を失うかもしれませんし、警察の捜査を受け、児嶋会長と共に刑事的な責任を問われるかもしれませんが、とにかく依頼者の方々に謝らなくてはいけないと考え直したのです。本当に、申し訳ありませんでした」

 代表弁護士の懺悔は、依頼者に届くか。

週刊新潮 2020年7月9日号掲載

特集「51億円倒産『ミネルヴァ法律事務所』雲隠れ『代表弁護士』が懺悔の独占告白!」より

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