文在寅政権下の思想警察化…批判する“壁新聞”を貼るだけで有罪判決の恐怖

国際 韓国・北朝鮮

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大学は「警察に捜査を要請した覚えはない」

 6月24日、韓国の大学で文在寅(ムン・ジェイン)大統領を誹謗する“壁新聞”を掲示した25歳の青年が裁判所から有罪判決を受けた。裁判所は、青年が無断で大学の建物に侵入して壁新聞を貼ったとして、「建造物侵入罪」を適用し、50万ウォン(約5万円)の罰金刑を言い渡したのだ。ところが、韓国裁判所のこの判決について、韓国社会では「無理な法適用」という批判が起きている。なぜなら、「被害者が存在しない」事件だったからだ。

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 コトが起きたのは、2019年11月25日の朝。忠清南道天安(チョンアン)にある檀国大学天安分校の建物から、文在寅大統領を誹謗する2枚の壁新聞が発見された。中国の習近平主席の名前を借用して、文在寅政権の親中政策を非難する内容だった。ちなみに檀国大学は、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル特別市長や、『ビッグバン』のT.O.P、『2PM』のオク・テギョンらの出身大学として知られている。

「わが中国共産党は、韓国を共産全体主義陣営に編入させるために、莫大な投資と圧迫を加えてきた。2017年、ついに親中政権を樹立することに成功した。残っているのは在韓米軍の撤収のみだ」

「私(習近平)の忠犬である文在寅が日米韓同盟を破棄し、総選挙に勝利した後、米軍を撤収させて完璧な中国の植民地になれるよう準備を終えるだろう」

 檀国大学の学生課はこれを警察に連絡し、大学に出動した警察は、防犯カメラを確認して犯人とされる青年の身分を確認した。警察はすぐ青年に連絡を取り、青年は被疑者として取り調べを受けるため警察に出頭。この青年に警察は、彼が壁新聞を貼る映像を見せながら、壁新聞の出所と現場に他の仲間も一緒に行っていたのかどうかを問い詰めたという。

 口を割ろうとしない青年に対し、警察は「管理人の許可を得ずに建物に入ったのだから、お前は罪を犯した」と詰め寄った。青年は「学校の出入り口が開かれていて、建物もカギがかかっていなかった」と抗弁したが、警察は「故意であろうがなかろうが、結果的に(無断で)入ったのは間違いない」として、青年を検察に送致した。

 そして、今年1月末、大田(テジョン)地検の天安支庁は、青年を罰金100万ウォンの略式処分とする旨を通告したものの、青年が拒否。5月20日に正式裁判が開かれることになったのだ。

 ここまで読めば、一見、納得のいく展開にも見える。

 ところが、実は、「建造物侵入」事件の被害者であるはずの檀国大学側からは、青年の処罰を望まないという意見が数回にわたって警察に伝えられていたというのだ。

 つまり、被害者が処罰を望んでいないにもかかわらず、警察がこの事件を無理やり起訴相当との意見で検察に送致したことに批判が起きているのである。

 これに対し警察は、あくまでも「大学側の通報を受けて出動した」と主張。しかし、檀国大学側は韓国メディアのインタビューに、「当初、警察に捜査を要請した覚えはない。単なる業務上の協力で内容を伝えただけだ」と語った。しかも、文在寅大統領を誹謗する壁新聞が発見されれば連絡してほしいという警察の要請が以前からあり、大学側はこの要請に協力しただけだというのだ。

次ページ:検察が独占してきた権限の一部が警察に委譲されて…

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