巨人「坂本勇人」が「張本勲」を超える可能性は?各部門の通算最多記録を検証

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 記録は破られるためにある。スポーツの世界では使い古された言葉である。しかし、プロ野球の通算最多記録を見てみると、不滅とも言える記録が存在していることもまた事実である。そこで、今回は今後更新の可能性がある最多記録はどのようなものがあるのか、また更新できるとすれば誰になるのか、探ってみたいと思う。まず投手部門、野手部門でそれぞれ主なNPB通算最多記録を並べてみると以下の通りとなった(所属は最終)。

【投手部門】
勝利 金田正一(巨人):400勝
登板 岩瀬仁紀(中日):1002試合
セーブ 岩瀬仁紀(中日):407セーブ
ホールド 宮西尚生(日本ハム):337ホールド ☆現役
奪三振 金田正一(巨人):4490個
防御率 藤本英雄(巨人):1.90 ※2000投球回以上
勝率 藤本英雄(巨人):.697 ※2000投球回以上

【野手部門】
安打 張本勲(ロッテ):3085本
本塁打 王貞治(巨人):868本
打点 王貞治(巨人):2170打点
盗塁 福本豊(阪急):1065盗塁
試合 谷繫元信(中日):3021試合
打率 青木宣親(ヤクルト):.326 ※4000打数以上 ☆現役

 まず、投手部門だが、不滅の可能性が高いのが金田の400勝と4490奪三振だ。400勝の内訳を見てみると、268勝が先発で132勝がリリーフで挙げたものである。1951年から14年連続20勝をマークし、この期間の登板イニング数は全て300回を超え、奪三振も200以上を記録している。楽天時代の田中将大(ヤンキース)が2013年に24勝をマークしたが、その時でもイニング数は212回で奪三振は183個だった。野球のルールが大きく投手有利に変わるようなことがない限り、現代野球では更新の可能性は極めて0に近いだろう。

 その一方で現役選手も名を連ねている。それがホールド歴代1位の宮西だ。プロ入りから12年連続で50試合以上に登板し、3度の最優秀中継ぎ投手に輝くなど長く活躍。一昨年、山口鉄也(元巨人)を抜いて歴代1位となった。今年で35歳となるがチームの中継ぎでも最も安定した存在であり、順調にいけば500ホールドも見えてくるだろう。現役2位が五十嵐亮太(ヤクルト)の163ホールド、3位が藤川球児(阪神)の162ホールドと宮西よりも年上の選手が続いているだけに、しばらく宮西の名前が残り続けることになりそうだ。

 他では日米通算という参考記録で可能性があるのが登板数だ。一昨年、史上初となる1000試合登板を達成した岩瀬が現在1位だが、ホールドでのところでも触れた五十嵐が現在日米通算905試合を記録している。古巣ヤクルトに復帰した昨年も45試合に登板して、防御率は2点台とまだまだその力は健在だ。今年を含めてあと3年間、昨年と同程度の投球ができれば日米通算で岩瀬を抜く可能性は高いだろう。

 岩瀬が持つもうひとつの407セーブについては、松井裕樹(楽天)が24歳の時点で139セーブをマークしており、このまま抑えを務め続ければ更新の可能性は十分にあったが、今年から先発に転向となったことで難しくなった。しかし、岩瀬が抑えを任されたのが30歳になるシーズンだったことを考えると、今後松井のように高校卒で早い段階から抑えに定着する投手が出てくれば記録更新は決して不可能ではなさそうだ。

 野手部門では王の868本塁打、2170打点と福本の1065盗塁がアンタッチャブルな数字となっている。本塁打、打点の2位は野村克也(元西武)で657本塁打、1988打点、3位は門田博光(元ダイエー)で567本塁打、1678打点であり、王の突出ぶりがよく分かる。盗塁については、さらにその差が大きく、2位の広瀬叔功(元南海)は596盗塁と実に500近い差がついている。イチローが日米通算で708盗塁をマークしたが、それでも福本の牙城には迫ったとは言えないだろう。

 そんな中で更新の可能性がありそうなのが張本の3085安打だ。そして、現役選手で最も可能性が高い選手となると坂本勇人(巨人)になるだろう。プロ生活13年間で積み上げたヒット数は昨シーズン終了時点で1884本。1年目は4試合の出場で1安打のみだが、それ以降は平均してシーズン150本以上のヒットを打ち続けている。年齢的にも今年で32歳とまだまだ若く、あと5年程度はこのペースで打ち続けられる可能性が高いだろう。記録更新に向けてポイントとなりそうなのが守備の問題だ。昨年もゴールデングラブ賞は受賞したものの、ショートとしての動きは衰えが見えてきている。体への負担を考えてもサードやファーストへのコンバートを検討する時期に来ていると言えるだろう。

 現役選手で野手部門の記録を保持しているのが通算打率の青木だ。メジャーからヤクルトに復帰した2018年に記録の認定に必要な4000打数をクリアして、リー(元ロッテ)の.320を抜いてトップに躍り出た。打率は他の記録とは違って減る可能性もあるため青木の地位も安泰ではないが、日本球界復帰後の打撃を見ても、ここから大きく成績を落とすことは考えづらい。現役選手では吉田正尚(オリックス)が1494打数で.315と高打率を誇っているが、青木を超えるのは至難の業ではないだろう。

 改めて見てみると、不滅の記録はあるものの、今後更新の可能性がある記録も決して少なくない。日米通算で4367本のヒットを放ったイチロー(元マリナーズ)のように、数々の記録を塗り替える選手がまた新たに登場することを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年7月5日掲載

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