ある意味の注目度ナンバー1「ごとうてるき」候補が最高裁まで戦った理由

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最高裁まで争うも

 さて、話を後藤候補に戻そう。2016年の後藤候補の「一部削除」は政見放送史上2度目のカット事件であった。前述のナレーションに続き本編が始まる。

「画面に映った後藤は顔面を両手で覆い、指の間から片目だけを見せていました。そして、第一声として『これからお休みの方も、お目覚めの方も、そして偶然、この映像を目にしてしまったあなたも、ようこそごきげんよう』と述べ、覆っていた両手を外し、画面に向かって指をさしました。その後、立ち上がりながら、第二声を発しますが、この時点で『後藤輝樹の(音声カット)の時間です』と、音声カットがされていたのです。

 さらに続いて、第三声を発しますが、『今から皆さんには(音声カット)を出し合ってもらいます』とここも音声カットがされていました。その後、踊りながら歌うというそれだけでも異様な姿を示しましたが、その歌の内容もいたる部分が音声カットされているというものでした」(『ヤバい選挙』より)

 本人によると、カットされた部分は、すべて男性の体の一部の俗称を述べたもので、表現の自由を訴える意図があったとのことである。

 なお、後藤候補はこの演説のノーカットバージョンをインターネット上にアップする一方で、カットを不服とし、東郷と同様に損害賠償請求の裁判を行う。この時、主張の根拠とされたのが、先ほど登場した東郷候補の例だった。東郷も同様の俗称を述べた際にカットされなかったのに、自身の政見放送ではカットされたのは不当だ、という理屈である。

 しかし地裁、高裁とも「第150条の2」違反だと判断し、後藤候補は敗訴してしまう。

「高裁で注目するべき点として、東郷との政見放送の比較が行われました。高裁判決では東郷の政見放送がそのまま放送された経緯と理由は明らかではないものの、東郷が俗称を用いたのは2回なのに対し、後藤の政見放送は5分余りの中で俗称がが80回以上繰り返されており、この両者の政見放送は大きく異なるものであるとしていました」

 後藤候補は判決を不服として最高裁に上告したものの棄却され、最終的に敗訴している。

 この経験が活きたか、2020年の後藤候補の政見放送はスレスレのところを狙いながらも、無事に放送されていた(ように見える)。得票は別として、今回は表現の自由を享受できたのではないだろうか。

『ヤバい選挙』より一部抜粋・再構成。

デイリー新潮編集部

2020年7月3日掲載

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