ボウガン殺傷事件 規制に「4つの抜け穴」

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 宝塚市で家族ら4人の殺傷に使われたボウガンは、洋弓銃の訳語もある「武器」だ。事件後、兵庫県は青少年愛護条例でボウガンを有害玩具類に緊急指定した。

「18歳未満の青少年に販売等した業者は、30万円以下の罰金となります」(兵庫県青少年課)

 2015年に茨城県取手市でボウガンによる傷害事件が起きた際も、県は条例で有害器具に指定している。

 茨城県青少年家庭課は、

「早くは昭和の頃に有害と分類している自治体もあり、当時、12自治体が条例の指定対象としていました」

 ただし、条例は事実上、抜け穴だらけだ。第一に、18歳以上が購入する分には問題がなく、兵庫県知事も「全年齢を対象にした規制を検討したい」と発言したほど。次に、規制対象も業者による販売等にとどまり、個人間の売買は制限できない。第三に、県ごとの規制である以上、条例に同様の指定を加えていない自治体では天下御免で購入可能。第四に、ネットを使えば誰でも自由に買えてしまう。

 ボウガンを競技として楽しむ層は「100人弱」(日本ボウガン射撃協会)と、ごく少数だ。なぜ国はこれまで規制してこなかったのか。神奈川県警元刑事の小川泰平氏は、こう見る。

「残念ながら日本では大きな事件でもないと法規制の議論が起こらず、先の宝塚市での惨劇を受けてやっと世論が騒ぎ出した感があります。ただ、若者が家族を手にかけた“身内の事件”だと見なされ、ボウガンの放置は深刻かつ身近な危機だとの認識が必ずしも醸成されていません。菅官房長官は『規制を検討する』と語っていますが、どこまで本気で取り組むつもりなのか」

 もちろん、規制は急務で、

「まずは、ある程度の大きさで威力が強いものについては、店舗でもネットでも販売者側に購入者の身元確認を義務付けるべき」(同)

 次の悲劇が起きる前に。

週刊新潮 2020年6月25日号掲載

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