大戸屋に買収仕掛けたコロワイドが株主総会で“敵前逃亡”と言われたワケ

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シーン……

「議長を務めた大戸屋の窪田健一社長が、コロワイドに対し『提案株主が説明を希望する場合は説明の機会を設けたい』と発言しました。ところが、会場はシーンと静まりかえったまま。コロワイドの野尻社長は、株主総会には『オレが行く』と周囲に言っていたそうですが、来ていなかったので意外でしたね。おそらく野尻社長は、株主に電話でお願いした感触が芳しくなく、負けを察したのかもしれません。わざわざ株主総会に出席して負けて、記者に囲まれるのを嫌ったんじゃないでしょうか。結局、『ご賛同される株主の方は拍手をお願いします』と言う声に対しても、シーン……。第1号議案の時も、第2号の時にもドッと拍手が鳴り響いたんですけどね」(同)

 コロワイドの社員は1人だけ出席していたという。

「第3号議案は事前に議決権行使されていました。ただし、当日、コロワイド側から出席者がいれば、その場での意思表明が優先されることになっています。にもかかわらず、コロワイド社員は、説明することも、賛成の意思を表明することもありませんでした。会場には、コロワイド側の申し立てにより、公正中立な立場である総会検査役も控えていましたが、彼らも拍手を確認できなかったそうです。そのため、コロワイドの持つ議決権数は賛成にも反対にも棄権にも数えられませんでした。その結果が、関東財務局に提出された臨時報告書の中で明らかにされています」(同)

 第3号議案、つまりコロワイドが提案した取締役12名の筆頭には、コロワイドの蔵人金男会長の息子である蔵人賢樹(まさき)専務の名がある。彼への賛成数は8214、反対数は3万348だった。そしてしんがりを務める大戸屋創業者の息子・三森智仁氏は、賛成7397、反対3万1165だった。賛成比率は、わずか15%程度しかなかったことになる。

「創業精神を受け継ぐと言われた智仁氏は、賛成数が最低、逆に反対数は12名の中で最高でした。大戸屋の株主に嫌われたと見て良いでしょう。彼は父の生前に大戸屋に就職したものの、父の死後に現経営陣に反発して出て行ってしまいました。そして父の遺した株を、よりによってコロワイドに売り、役員として乗り込もうとしていたのです。そりゃあ反発だって食らいますよ。創業者は『セントラルキッチンはやらない』と明言していたんですから。コロワイドとしても、この先、利用価値のなくなった彼をどう扱うのでしょうか」(同)

 コロワイドは、敵対的TOBを駆使しても大戸屋を買収すると息巻いていたが……。

「これまで『牛角』や『かっぱ寿司』など運営するチェーン店の名前は知られていましたが、今回、大戸屋買収に動いたことで、コロワイドのイメージは大きくダウンした。野尻社長はテレビに出演したことで、横柄な態度が顰蹙を買い、さらにコロワイドを支持していた株主も離れてしまったかもしれません。大戸屋に限らず、株主はその企業のファンだから株を購入するだけではありません。高値になれば売るわけです。野尻社長は『株主総会で失敗したら、敵対的TOBも辞さない』とまで発言していた。株主としては、株主総会でコロワイドを勝たせるよりも、TOBを待って高値で買ってもらったほうが得になると考えるわけですからね。その上、総会では説明もせず、拍手すらしなかったわけです。あれだけ騒いでおいてコロワイドって会社は何なんだ!と思った方も多いと思います」(同)

 現在、大戸屋の株価は上がっているという。

「TOBを期待した動きもあるでしょうね。しかし、コロワイドには“のれん”という課題がある。企業を買収で支払った額のうち、純資産を上回った差額をのれんと言いますが、コロワイドののれんは700億円以上で、業界一と言われています。業績が急に悪化した場合、のれんを減損処理しなくてはならなくなる。そこへさらに、高値のついた大戸屋株を購入するとなれば、のれんはさらに膨らみます。コロワイドはコロナ禍で業績が急激に悪化しています。のれんを吊り上げている余裕はないはずです」(同)

 そんなコロワイドの株主総会は6月30日である。

「蔵人会長が何を発言するか楽しみですね。なにしろ、買収した企業の社員に対し、自分に挨拶がないというだけで、“張り倒した”、“アホ”、“生殺与奪の権は私が握っている”とまで社内報で発言する人ですから。そうそう、大戸屋の株主総会に出席して何もしなかった社員は大丈夫でしょうか。おそらく、何も教えられず、『行ってこい』と命じられただけの社員だと思うんです。彼は今後、どうなることやら」(同)

週刊新潮WEB取材班

2020年6月29日掲載

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