感染者が減るとワクチンが開発できない? 製薬現場のジレンマ

国内 社会 週刊新潮 2020年6月11日号掲載

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「オリンピックを成功させるためにも治療薬、ワクチンの開発を日本も中心になって進めていきたい」――先月初旬、安倍総理はそう述べたが、東京五輪開催の可否を判断するタイミングは約4カ月後にやってくる可能性がある。判断のカギを握るのは、ワクチンだ。

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 先月22日、五輪開催の可否を評価する時期は10月頃になる、との見通しを語ったのは国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ調整委員長である。さらに、ワクチンが開発されても各国で広く供給される状況になっていないと開催は難しい、との見方も示した。

 つまり、ワクチン開発のスピードが重要なのだが、ウイルスそのものなどを使う従来型のワクチンは時間をかけて臨床試験を行うため、来夏にはとても間に合わない。そこで注目されているのが、ウイルスの遺伝子の一部などを人工的に合成するタイプのワクチン開発なのだ。

 目下、我が国でそのワクチンの開発に取り組んでいるのは、大阪大の森下竜一教授(臨床遺伝子治療学)と、同大発のベンチャー企業「アンジェス」である。同社は手足の血管が詰まる慢性動脈閉塞症の治療薬「コラテジェン」を開発した実績を持つが、この薬に使われているのがDNAプラスミドという技術。この技術を使えば、ウイルスに近い形の遺伝子を人工的に作り出すことができるという。

 具体的な方法としては、新型コロナウイルスが人の細胞にくっつくためのスパイクと同じDNAを投与し、体に「異物が来た」と判断させ、そのスパイクの型に合った抗体を作らせてウイルスの侵入を防ぐ。すでに動物実験では抗体価上昇が確認されたという。

 今後の見通しについて森下教授に聞くと、

「7月に30人規模での臨床試験を予定しています。それ以降は未定なところも多いですが、9月くらいから400人規模の臨床試験を考えています」

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