コロナ12人集団感染の「歌舞伎町ホストクラブ」がSNSで謝罪したワケ

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 6月6日に東京都で確認された新型コロナウイルスの新たな感染者26人のうち、12人が同じホストクラブに勤める従業員だった。相次ぐ「夜の街」での感染に、小池百合子都知事は相談窓口を設けるなどの検査体制の強化を発表している。作家の酒井あゆみ氏が、コロナ禍に揺れる店の実情に迫った。

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 今回、集団感染が発覚した店「X」(仮名)は、創業23年目の老舗ホストクラブ。9日、次のような“謝罪”を店のSNSに公開した。(句読点や改行などはこちらで追加・修正)

〈5月30日に新型コロナウイルスの感染が確認されてから営業自粛しておりますが、6月3日、全スタッフに1回目のPCR検査を行ったところ、新たに感染者が確認されました。また6月8日、2回目のPCR検査を全スタッフに実施しました。

 当店ご来店のお客様に関しましては5月30日のスタッフ感染確認以降、PCR検査の協力をお願い致しております。以上を経過報告とさせて頂きます。ご連絡先が分からずこちらから報告できないお客様もいらっしゃいますので、心当たりのある方はお手数ですが保健所にご相談お願いします。皆様にご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます〉

 公開された謝罪文ではさらに、保健所や医療関係者に今後の防止対策を助言してもらったこと、スタッフ全員の陰性を確認次第、営業を再開する旨が書かれている。

 ホストクラブでコロナ感染者が出たと聞いても、私の正直な感想は「やっぱりな」というものでしかなかった。

 ホストクラブは、歌舞伎町の「終着点」といっても過言ではない。街を訪れた客を相手にしたキャバ嬢や風俗嬢が、ストレス発散を求めて訪れる先がホストクラブ。店も人も密集する歌舞伎町では、店側が感染予防をしても、お客がウイルスを持ってきてしまう。そして店では“コール”を行い、シャンパンを回し飲み。これでは飛沫感染や接触感染が防げなくてあたりまえだろう。加えて老舗有名店の「X」は、夜の街の女性だけでなく、いわゆる一般の客も多い。様々な層の客が集まりやすい店であり、それだけ拡大のリスクはあったといえよう。

 とはいえ「自粛警察」とも呼ばれる人々が跋扈する今、店が特定されるリスクがありながら“謝罪文”をきちんと公開したのは、意外とも言えないだろうか。

「店にしてみればヘタに噂を流されたくなかったみたいです。スタッフのPCR検査費用はすべて店が負担しましたね」

 と明かすのは、「X」の関係者だ。

「検査をきちんとやって経過を報告し、最終的に全員が陰性になったと報告すれば『ウチは感染者がいない店だ!』と堂々と言えるじゃないですか。この時代、もっとも怖いのはSNSですから……」

 昔からホスト業界は「噂話」と縁深い。「アイツは枕営業だ」といった、同業者やライバルホストの悪口話は絶えない。それがSNSの発達によってさらに加速する。またホストクラブという特性上、ホスト本人に加えて、それを応援する客側も、いっしょになってSNSで噂を流す。

 謝罪を公開した「X」が気にしたのもまさにこの点で、コロナ感染であることないことを言われるのを嫌ったためだというのだ。

 そう考えると、小池知事の「夜の街」検査の強化には一定の効果があるように思えるが、店側にも“安全のお墨付き”を与えることにもなりそうだ。もっとも、当のホストたちには不評だ。

「検査なんかやっても無駄。陽性者が出たら店を閉めさせて休業補償をするならともかく、お金、出してくれるんですか? 家賃100万、維持費だけで数百万ですよ。無理でしょう。給付金の対象からも排除されてるし、結局『夜の街』は生きていく為に現場で稼ぐしかないんですよ……」

酒井あゆみ/作家
1971年福島県生まれ。上京後、18歳で風俗の世界に入り、ソープランド、ファッションヘルス、AV女優、ホテトル、性感マッサージ、SM倶楽部などを経験。23歳で風俗を引退し、作家に。主な著作に『売る男、買う女』『ラブレスセックス』(ともに新潮社刊)。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年6月11日掲載