「モテたいなら話を聞け」って本当なの? 心理学的アプローチとは

ライフ

  • ブックマーク

Advertisement

 恋愛マニュアルや夫婦間のコミュニケーションに関する本などで、よく言われるのが、「女性が話をしているときに、求めているのは正論や分析ではない。あいづちだ」といった説だ。

 モテたいならば、相手の話を聞くのが第一――かなり定説となりつつあるのだが、実際にはどうなのだろうか。「つい俺もしゃべりたくなってしまう」という人には需要はないのか。

「モテ」問題に代表される、異性とのコミュニケーションは常に多くの人にとって悩みのタネである。そんな悩みは抱えたこともない、という恵まれた人は放っておいて、フリーアナウンサーで「しゃべりのプロ」梶原しげるさんの著書、『ひっかかる日本語』から「モテ」問題に関する部分を紹介してみよう(以下、同書より引用)

 ***

 老若男女の悩みのかなりの部分を「モテ」問題が占めている。もちろん、そんなものもう卒業しましたという人や、幸い一度も不自由したことがありませんという憎らしい人もいるだろうが、それでもその手のことで悩んだことがない人は珍しい。

 どんなに情報化が進んでも、いやむしろ情報が増えたことで悩みを増やしている感もある。「マニュアル本のアドバイス通りに服装を整え、デートコースも決め、楽しい会話も仕込んでみたが、まるで相手が乗ってこない」と嘆く若者は少なくない。

 そんな時に、「僕は背が低くて、太っていて、お金もないから」と原因を見た目や収入に落としこんで納得してしまう人もいるだろうが、それでは永遠にチャンスは訪れない。

「ひょっとして、自分には『解読スキル』が足りなかったのではないか?」

 そう気持ちを切り替えることで恋愛がいい方向に急展開する……かもしれないと心理学では言っている。

「解読スキル」は文字通り「スキル」だ。簡単に言えば、相手の心を読み取り(解読し)、それに沿った行動ができる能力のこと。スキル=技術=テクニックだから、訓練次第で熟達可能である。身体的、金銭的ハンデを過度に気にする必要はない。

 身の回りを見渡して欲しい。二枚目や美女が必ずしもいい恋愛を育んでいるとは限らない。むしろパッと見「?」というタイプが素敵な恋をして、結婚。素晴らしい家庭を築いているという例はそこかしこにあるのではないか。

「相手の気持ち」を推し量り、理解する技。言い換えれば、相手の立場にたった「配慮」や「思いやり」に基づく「愛他的心(自分以外の相手への愛を重視する気持ち)」を持つ「スキル・能力」は恋愛の必須アイテムだ。

 具体的な戦略論に入ろう。武器に用いるのは「自己開示の返報性」と呼ばれる法則だ。こちらが構えることなく開けば相手も開く、こちらが構えて閉じれば相手も閉じる。

 ごく浅い自己開示、例えば軽い独り言風に「気分をつぶやく」くらいの気持ちで「素の自分」を伝えてみる。いきなり深く「熱い思い」を語り始めてはならない。相手はその「重さ」に耐えられず、気持ちが冷めてしまう。「返報」など期待できなくなってしまうのだ。

「思う人には思われず、思わぬ人に思われる」という言葉がある。「これが本命、絶対に仕留めてやる」。仕事も恋愛も、力めば力むほどうまくいかない。無用な力みは「素直な自己開示」の大敵だからだ。

 解読する事に焦ってしつこく問いただそうとするのも相手に「鬱陶しいやつだ」と思われ「引かれる」だけだ。マニュアル本に欠けがちなのがこの視点。ある「デート指南本」を読んだら、親しくなるために「どんどん質問をぶつけることがポイント」とあった。この本に限らず、「女性は話をしたがっている。聞いてもらいたがっている。だから聞き手になればいい」といった説はよく目にする。それは間違いではないのだろうけれども、ストレートに実践するのは見当違いである。

 想像してみて欲しい。付き合いの浅い相手が、急に自分のことをベラベラ喋るわけではない(そういう人もいることはいるだろうが)。そういう場合、聞き手になろうとしたら、おのずと質問をぶつけることになる。

「血液型は何?」「星座は?」「何食べる?」「何したい?」「どこ行きたい?」「今楽しい?」「お母さんに電話とか入れなくて大丈夫?」「トイレすましとく?」

 これで相手は喜ぶか。いや、「うるさい!」と叫びだすはずだ。ではどうするか。質問の前に自分を少しだけ「開く会話」を心がけることだ。

男「いやー、雨上がって良かった!(ひとりごと風に)」

女「昨日だったらこんな素敵な庭園カフェでお茶を飲めなかったわ」

男「こんな風に天気予報が外れるのは嬉しいなあ」

女「予報より私の勘のほうが当たることがあるのよ」

男「僕も生まれが信州の山あいだから、雨とか雪とか霜とか天気には敏感なんだ」

女「えー、私は静岡。お隣の県なのね」

男「静岡なんだ! 先週出張で三島に行ったけど、富士山がすぐ眼の前にでっかくそびえていて、びっくりした」

女「私、あの駅の近くにある日大の国際関係学部出身なの」

男「えっ! 僕は同じ日大でも神保町の法学部だけど」

女「同窓生だったんだ!! 何年卒?」

 何でもないこのやり取りは「自己開示の返報性」の分かりやすいサンプルだ。「君とデートできて良かった」という気持ちを、「雨が上がって良かった」と軽い言葉で投げかける男性。重い自己開示で無用なプレッシャーを与える事を巧みに避けている。

 その彼の気持ちを受けて「私もこの場所に来られてちょっと嬉しいかも」との感情を、彼と同レベルの表現で自己開示して返す彼女。彼女は徐々に打ち解けて、自分の「天気に敏感」という特性をちょっぴり自慢気に語り始める。

 彼はさり気なく故郷に話を展開し、自己紹介話につなげていく。それに応じて彼女も出身地に触れた会話をしてきた。そして思わぬ所で同窓生である、という共通項を発見。距離は一気に縮まってくる。

 もちろん、こんなふうに上手くいかないことだってある(そのほうが多い)。しかし、そういう「解読スキル」を意識した会話スタイルを磨いておくといい出会いのチャンスをつかみとる確率が確実に増える、はずだ。

デイリー新潮編集部

2019年8月20日掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。