小池都知事の「新しい生活様式」が壊す文化、芸術 経済回復も困難に

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「ウィズコロナ」の風を受けて帆走中の小池百合子知事がいま、順守を訴えているのが「新しい日常」である。〈手洗いの徹底・マスクの着用〉〈(2メートルの)ソーシャルディスタンス〉〈「3つの密」を避けて行動〉を軸に、買い物は〈少人数・短時間で済まそう〉等々定められている。5月4日に専門家会議の提言を踏まえて発表された「新しい生活様式」を言い換えたものであることは、指摘するまでもなかろう。

 たとえば「新しい生活様式」には、こんな実践例も挙げられている。マスクの有無を問わず〈人との間隔は、できるだけ2m(最低1m)空ける〉〈会話をする際は、可能な限り真正面を避ける〉。また、食事では〈対面ではなく横並びで座ろう〉〈料理に集中、おしゃべりは控えめに〉。

 これらを実践し、定着させるべきことを、各自治体がHP上で訴え、またテレビのワイドショーが日々連呼しているが、これを正直に守ったらどうなるか。

「専門家会議の提案通りに、新しい生活様式をきっちり導入するかぎり、日本経済の回復は難しいでしょう」

 と、第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏は釘をさす。

「民間エコノミストの予測の平均では、2020年のGDPは25兆円減少し、22年1~3月期になっても以前の水準に戻りません。失業者も、08年のリーマンショック後の113万人を上回る、130万人以上発生する計算です。またリーマン時の需要不足は、最も大きかった四半期に30兆円超でしたが、今回は20年1~3月期だけで40兆円を超え、22年1~3月期になっても20兆円超の不足になる。これらは、新しい生活様式の実践もある程度織り込まれていると推察されます」

 実際、人との間隔を2メートルもとっていたら、無数の事業が成立しない。たとえばクラシック音楽のマネジメント会社、KAJIMOTOの梶本眞秀社長は、

「2メートルのソーシャルディスタンスをとらなければならない状況では、私たちの事業は成り立ちません。いまは再開が大事なので、しばらく我慢が必要ですが」

 と嘆き、こう続ける。

「“新しい生活様式”と、政府はきれいに表現しますが、現実には、人に近づくな、触れるな、人を見たらコロナと思え、ということ。一方、音楽は人と時間や感動を共有するもので、いまの状況とはまったく逆です。その点は飲食業界なども同じでしょう。加えて心配しているのは、薬やワクチンができても、人に近づいたり触れたりするのが怖いという、冷たい社会になってしまうのではないか、ということです。芸術もスポーツも感動を共有するもので、隣の人を怖がっていては楽しめません」

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