マンネリ化を「脇役のキャラ立ち」で乗り切る「BSテレ東」の巧みさよ

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 特筆すべき新奇性はないものの、キャラクターが育っていき、ドラマの世界観が固められていくのを観るのは嫌いじゃない。ある意味「テレ朝の警察モノ方式」ね。心を奪われるほどの話ではないが、再放送をバンバン重ねて茶の間でのキャラクター認知度を上げていく。乗っかるよ、そこには。

 ただ、今回はテレ朝じゃないの。私が密かに愛情を抱いているBSテレ東なの。

 行動心理学を駆使し、容疑者や重要参考人と大脳辺縁系で対話。嘘を見破り、罪や目論見を暴く「サイレント・ヴォイス 行動心理捜査官・楯岡絵麻」である。

 一昨年シーズン1が放送され、今年は2。コロナの影響で、シーズン1もうっかり地上波(テレ東)で再放送に。他のドラマとスケジュールが微妙に異なるBSテレ東ならではの強みだ。よっ! 隙間産業の雄!

 主人公・楯岡絵麻を演じるのは、4K対応も完璧な栗山千明(シーズン2から4K、映像自体も超キレイ)。険のある美人だったが、角が取れてまろやかな顔立ちに。セリフも顔のアップも多い難儀な役だが、栗山は見事クリア。肌と瞳の美しさには感嘆した。ただし、サイトのメインビジュアルは技術でいじりすぎて怖い。素の栗山でいいのに。「科捜研の女」の沢口靖子はもうちょい自然ないじりだよ。

 それはさておき。栗山はまず小芝居を打つ。バカっぽく媚びた女を演じ、相手に心を開かせる。「マイクロジェスチャー」に「なだめ行動」、「3つのF(Freeze・Flight・Fight)」などの必殺技を展開するのだが、このあたりにはややワンパターン化の懸念もあった。ただでさえワンシチュエーションの心理戦、緩急つけないと厳しい。続編の課題だ。

 しかしながら、毎回のゲスト出演が私の好みという贔屓目もある。シーズン1でいえば、堀内敬子(霊能者の狂演)、望月歩(鳥肌級高校生)、眞島秀和(救いナシ)、安井順平&山本未來(覚悟の狂言)の回、特別編の石黒賢(裏をかく)が面白かった。今シーズンも軒並みよきゲスト(草間彌生オマージュで破壊力炸裂の杉田かおる、神父の佇まいが本格的な横田栄司、表では熱血・裏で淫行教師を演じた姜暢雄(きょうのぶおなど)だったが、冒頭のキャラの確立にも触れておこう。

 知的捜査で検挙率の高い栗山との対比として、わかりやすい立ち位置の宇梶剛士。脅して取り調べをする前近代的・土着的な刑事ね。時代の流れなのか、出番が減った気もするが。逆にその子分・綿貫こと野村修一が今シーズンは大活躍。ドジっ子と思っていたが、ちゃんと人情派に仕上がっとる。総務課のシオリちゃんこと椎名香奈江もアイドル的存在から、実は体育会系出身ド根性女子と判明。脇役の成長と展開で、マンネリ打破に貢献しているのだ。

 栗山の下僕役は、イマドキ男子感と心の声(ディスり&ツッコミ)が面白かった白洲迅から、顔芸が秀逸な馬場徹にバトンタッチ。日曜劇場御用達の馬場は顔の筋肉で残念感を表現。半眼で魂消えちゃってるよ! 各局が新作不足に喘ぐ中での大健闘は称えたい。シーズン3は……どうかな……。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2020年6月11日号掲載

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