小池知事「東京アラート」が抱える矛盾 レインボーブリッジが緑色になる日

国内 社会 2020年6月7日掲載

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“アラート”見物客が増加

 東京都は6月2日の夜、「東京アラート」を発令した。たちまちSNS上では「東京アラートって何だっけ?」、「東京アラートで何か変わるの?」などと、瞬く間に戸惑いの声が拡散していった。

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 東京都の公式サイトには、《「東京アラート」は、都内の感染状況を都民の皆様に的確にお知らせし、警戒を呼び掛けるものです》と書かれている。

 これだけでは何のことか、さっぱり分からない。本当に《的確にお知らせ》したのなら、困惑の声がこれほど広がることはなかったはずだ。

 ならば大手メディアは、どんな解説を行ったのだろうか。NHKのネットメディア「NHK NEWS WEB」は6月3日、「東京アラートとは 解除と再要請の考え方は」の記事を配信した。

 記事は《「東京アラート」は、東京都が休業要請などの段階的な緩和にあたり、感染状況が再び悪化して警戒すべき状況だと判断した場合に出されます》と説明した。

 どういう状況になれば《警戒すべき》と判断するのかは書かれていない。一方、解除の規準は紹介されている。

 1つ目は《1週間の平均でいずれも1日当たり、新たな感染の確認が20人未満》で、2つ目が《感染経路が分からない人の割合が50%未満》、そして3つ目は《感染した人の増加比率が前の週より低くなる》だ。

 ところが記事では《3つの指標だけで即座にアラートを解除するかどうかは検討中だとしていて、都は週単位で感染者の傾向を見極めたり、専門家の意見も踏まえたりして、判断したい考え》だという。要するに明確な規準はないのだ。

 東京アラートの発令に伴い、東京都庁とレインボーブリッジが赤くライトアップされた。テレビやネットメディアで動画や写真をご覧になった方も多いだろう。

 産経新聞グループの経済情報サイト「SankeiBiz」は6月3日、「東京アラートの夜にお台場で人出増加 ライトアップ見物か」の記事を配信した。

 見出し通り、赤くライトアップされたレインボーブリッジを見ようと、見物客が増加したという記事だ。

 新型コロナの感染対策には三密を避けることが有効とされている。レインボーブリッジの見物は屋外のため、密閉、密集、密接のうち、密閉は自動的に免れただろう。とはいえ、残りの“二密”はリスクが上昇したことは否めない。

 こうした事実が明るみになるにつれ、東京アラートとは「小池百合子都知事のパフォーマンス以外の何物でもない」という認識も広まりつつあるようだ。代表的なツイートを1つ、ご紹介しよう。

《海外の同僚に「東京アラートが出たらどうなるの?」と聞かれ、「橋が赤くライトアップされる」と答えなければならないバカバカしさをどうにかしてほしい。言う方も、聞く方も失笑。都知事選に向けた売名行為にコロナが利用されている。なぜメディアは突っ込まない?》

歌舞伎町は都民の敵!?

 ジャーナリストの二木啓孝氏も「東京アラートは、都知事選を目前に控えた小池知事のパフォーマンスと批判されても仕方ありません」と指摘する。

「そもそもコロナ対策で、小池知事は横文字を使いすぎだと思っています。『ステイホーム』、『ウィズコロナ』、そして『東京アラート』といった具合です。高齢者の理解が心配されるだけでなく、若年層でもニュアンスを誤読する危険性があります。仮に『東京コロナ警報』といった普通のネーミングだったら、都民は容易に意図を理解し、もっと冷静に受け止めたのではないでしょうか」

 東京都は「新型コロナウイルス感染症を乗り越えるためのロードマップ」を作成している。

 例えば、ステップ1なら博物館や学校の一部に対する休業要請が解除される。ステップ2なら学習塾や劇場が追加される。そしてステップ3になるとパチンコ屋でも麻雀店でも再開OKとなる。

 現在はステップ2が発令されている。それでも一部のパチンコ屋はステップ1の段階で営業を再開するなど、業界によって都の方針にどこまで従うかは様々だ。

 今回の東京アラートは、このロードマップとセットになっている。とはいえ、アラートが発令されたからといって、ステップ2が1に戻るわけでもない。

 先に見たNHKの記事も、感染状況が悪化した場合、ステップを戻すことは《「再要請」を行うことも検討する》と報じたが、肝心の部分は歯切れが悪い。

《再要請をする場合、今の緩和の段階である「ステップ2」を1つ前の「ステップ1」に戻すのか、最初に要請した段階、つまり飲食店の場合だと営業時間を午後8時までとしたり、多くの施設に休業を要請したりした「ステップ0」まで戻すのかどうかは検討中だとしています》

 歯切れが悪いのは、もちろんNHKの責任ではなく、都が何も決めていないからだ。二木氏が呆れて言う。

「小池知事はご自身でステップ1、ステップ2と自粛要請を緩和していったわけです。それを維持しながら、東京アラートを発令して警戒を呼びかける。車を運転するのにアクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなもので、まさに矛盾しています」

 小池知事は「夜の街」が感染源の1つになっているとし、6月5日の会見では「夜の見回り」を新宿の歌舞伎町で実施するとした。発言をご紹介しよう。

《多くの新規感染者との関連が判明している夜の繁華街、夜の街でありますけれども、都民の皆さんに対して、街頭での注意喚起、それから周辺区域での呼びかけをいたします。これは地元自治体と連携をして実施するものであります。まず、きょうの金曜日、5日19時から、新宿区の歌舞伎町周辺で実施をいたします》

 二木氏は、小池知事の発言によって、歌舞伎町が“悪者”になってしまったことに、懸念を示す。

「歌舞伎町という繁華街は、多種多様な側面があります。文化的な施設もあれば、老舗の名店もあり、そしてスケベなお店もたくさんあります。小池知事は、それを十把一絡げに『歌舞伎町』と呼ぶことで、いわば“仮想敵”にしたのだと思います。歌舞伎町でも感染リスクの低い店もあれば、高い店もあるのが実情です。ところが小池知事の発言を聞いていると、歌舞伎町全体が非常に危険な場所に思えてしまいます。しかも、それだけの発言をしたにもかかわらず、休業補償がセットになっていないのも大問題です。歌舞伎町で働く方々は、たまったものではないでしょう」

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