「田中角栄」と「安倍晋三」を比べたら コロナ対応を“シミュレーション”

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徹底的に勉強

 また、安倍総理は会見の度に“専門家の意見もうかがいながら……”と口にするなど、「専門家会議任せ」の姿勢も透けて見える。

「角栄さんなら、専門家会議任せには決してしないでしょうね」

 と、政治評論家の小林吉弥氏は言う。

「角栄さんは自分が理解できないことは徹底的に勉強する方でしたから。その上で専門的なことについては、医者や学者にデータを上げてもらい、それを厚労省に精査させて政治に生かす。専門家たちに対しては、『何かあれば自由に言ってくれ。責任は私が取る』と呼びかけたことでしょう」

 角栄は「コンピューター付きブルドーザー」と評され、数字に非常に強かったことでも知られている。

 自民党の石破茂元防衛大臣が言う。

「角栄先生なら、PCR検査で結果を判定するのにどれくらいの労力が必要か、臨床検査技師でなければ検査できないものなのか、検査機器が1台いくらするのか、誤判定する確率はどれくらいなのか……こういった点をデータに基づいて緻密に調べるよう指示されたことでしょう。どれくらいのスピードでやれば、どれくらいの検査数がいつまでにできるようになるのか、ということを数字で明らかにされただろうと思います」

 一方、専門家会議が示した「新しい生活様式」については、

「角栄さんなら、『生活様式なんてお上が指図するものじゃないだろう。日本人はそこまで間抜けじゃない』と怒ったのではないでしょうか。一歩間違えれば箸の上げ下ろしまで指図されるような窮屈な社会になりかねません」

 と、先の佐藤氏。

「こういう時こそ、選挙などなくても政治家は地元に帰り『何とか乗り切ろう』とみんなを元気づけてこい、角栄さんならそうおっしゃったんじゃないかな」

 対策は専門家会議任せで、補償については場当たり的でスピード感もない。これでは国民の支持など得られるはずもないが、

「角栄さんなら安倍政権のような戦略なき政策ではなく、終息後のことまで見通した長期的な政策を打ち出すことは間違いない。新たな日本列島改造論ともいうような、日本再建のための20年計画を立てるのではないでしょうか」

 と、先の小林氏は言う。

「新型コロナの流行で、地方経済も疲弊している。25年後の2045年は全ての都道府県で高齢化率が30%を超えると予測されている年で、地方経済の衰退は深刻化しているでしょう。そこでこのコロナ禍を機に、角栄さんなら東京一極集中を改め、道州制の実現を目指すなど、地方の力を高めるような経済対策を取るのではないでしょうか」

 無論、全ては「夢想」に過ぎない。しかし、「角栄ならこうしたのではないか」という夢想の中に、事態打開のヒントが隠されているかもしれない。

週刊新潮 2020年6月4日号掲載

特集「コロナ禍に『田中角栄』だったらば」より

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