甲子園中止で見られないドラフト候補選手たち 「空手道場で筋トレ」の自主練語る

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 観客席はもちろん、ベンチもまた3密と無縁とは言い難く、春のセンバツに続き、夏の甲子園も中止となった。残念極まりないところだが、大人たちがプロの卵を値踏みする機会もまた奪われてしまったわけだ。そこで、秋のドラフト指名確実な選手たちをピックアップしてみると……。

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 高野連は5月20日、夏の選手権大会の中止を発表。戦後初めてで、春夏連続の中止もまた戦時下以来である。

「すでに春の時点で注目選手は多かったので、スカウト陣はがっかりでしょうね」

 とは、高校野球に詳しいライターの菊地高弘氏。

「昨年の佐々木朗希や奥川恭伸クラスはいませんが、兵庫・明石商の中森俊介投手や来田涼斗外野手は、複数球団が注目する選手です」

 ともに1年生の夏から甲子園に出場し、昨年は春夏ともにベスト4。中森投手は常時140キロ前半のストレートとチェンジアップとの緩急が武器で、牽制やバント処理にも優れており、

「総合力の高さが魅力で、例えれば桑田真澄タイプ。来田君はパンチ力があり、ソフトバンクの柳田のようなフルスイングが魅力です」(同)

 また、スポーツジャーナリストの染谷恵二氏は、

「横浜高校の度会隆輝(わたらいりゅうき)内野手は、父親が元ヤクルトの度会博文さん。打球にスピンをかけるバッティングは、内野の正面に飛んでもグラブからボールがこぼれてしまう職人技です。同じ横浜の松本隆之介投手は187センチのサウスポーで、複数のチェンジアップにナックルカーブ、スライダーなど球種が豊富で、実況席からも判別が難しい。そして、石川・星稜の内山壮真捕手。ショートも守り、深い位置からノーバウンドで送球する鉄砲肩と、本塁打を量産するパワーが持ち味です」

家康の遺訓を

 そんな彼らも、現在はチームでの練習が叶わず、ひたすら“自主練”に精を出しているようで、

「自分の目標はプロなので、いつ代替試合が行われてもいいように備えています」

 そう口にするのは、明石商の中森投手。本人を知る関係者が続けて、

「中森君は、3歳上のお兄さん相手にキャッチボールをしたり、塁間距離の約27メートルをダッシュしたりと、自宅で練習を続けています。小学2年生から野球を始めた本人は、幼い頃から甲子園を目指してきた。目標だった“5期連続出場”が途絶えてしまったことを、とても残念がっていました」

 また「鉄砲肩」の星稜・内山捕手も、本人に代わって80歳の祖父が、

「孫は今、父親の空手道場でバーベルを使った筋トレをし、1歳上の兄と遠投の練習もしています。3年生になって主将を任され、昨年は奥川君がいて準優勝だったから“今年こそ”という思いは当然あったでしょう。でも、今回のことはプラスに捉えてほしいので、私はあの子に徳川家康の『勝つことばかり知りて負くることを知らざれば害その身に至る』という遺訓を、LINEで送ったりしています」

 全国で、雌伏して時を待つ有望株が爪を研いでいるのだ。

週刊新潮 2020年6月4日号掲載

ワイド特集「新しい日常」より

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