合言葉はノーモア杉村太蔵(古市憲寿)

国内 社会 週刊新潮 2020年6月4日号掲載

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 政治に対する信用度が低下している。

 世界では新型コロナウイルスの対応を巡り、リーダーへの注目が高まっている。ニューヨーク州のクオモ知事、ドイツのメルケル首相など名を上げた指導者も多い。

 しかし、その中で日本の安倍首相だけは評価が低迷している。アメリカの調査会社が発表した国際比較でも、支持率の下げ幅が断トツだった。

 一見すると不思議である。少なくとも現時点において、日本のコロナ政策は失敗したとは言えないだろう。他の東アジアの国々と同様、感染者と死者を低く抑え込んでいる。

 しかも経済対策に108兆円を投じることが発表されており、GDP比で考えると世界最大規模だ。政府の財政出動だけを見ると金額は下がるが、普段から重税のヨーロッパ諸国と比して遜色のない「補償」を国民や企業に対して講じることになる。

 比べて、欧米のほとんどの国は、疫学的にはコロナ対策に大失敗した。成功例とされるドイツでさえ、人口100万人当たりの死者数は日本の15倍以上である。ニューヨークに至っては、遺体の処理さえもままならなかった。

 なぜコロナ対策に「成功」したはずの日本で、リーダーが評価されていないのか。

 一つは語り口かも知れない。クオモ知事の会見は頼もしく、メルケル首相のスピーチは聡明に思えた。政治は結果責任と言われるが、実際は結果という「過去」などではなく、根拠薄弱でも力強く「未来」を語る指導者が好まれるのだろう。

 本当は危険なことだと思う。仮にこれが戦争だった場合、勇ましく戦火を広げるリーダーよりも、口下手でも犠牲者を抑えられるトップのほうがいい。

 日本の弱点を再確認した人も多いのだろう。この国では、布マスクを国民全員に配るのに何カ月もかかることがわかった。マイナンバー制度の中途半端さもばれてしまった。行政手続きのIT化が全く進んでいないこともわかった。4月までは保健所に対するコロナ発生届がFAXでやり取りされるありさまだった(本当、信じられないよね)。

 このように爆発した不満が政治に向いているのだろう。確かに政治の不作為を批判することはできる。ではどうしたらいいのか。

 提案1。政治が信じられないというなら、最も信頼度や好感度の高い人に名誉大統領をやってもらう。内村光良やマツコ・デラックス、池上彰あたりだろうか。

 少し真面目に提案2。国会議員の報酬を10倍にする。現在、国会議員の歳費と手当は約2200万円。それに自由度の高い経費を合わせると「年収」約4千万円。非常に高額ではあるが、国で最も優秀な人を集めるには足りない。トップ経営者や研究者は億単位の報酬を得ている。彼らにリスクを冒してでも政治家になってもらうのに4億は必要だろう。代わりに議員数を10分の1にしてもいい。中途半端な目立ちたがり屋に払う4千万円ほど無駄なお金もないと思う。合い言葉はノーモア杉村太蔵。

古市憲寿(ふるいち・のりとし)
1985(昭和60)年東京都生まれ。社会学者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員。日本学術振興会「育志賞」受賞。若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した『絶望の国の幸福な若者たち』で注目される。著書に『だから日本はズレている』『保育園義務教育化』など。