尖閣周辺で中国船が挑発行為、海上民兵による上陸作戦なら海自は手出しできず

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ゲリラ攻撃

「中国軍」としてではなく、漁民を装った海上民兵による上陸作戦が行われる可能性もある。これが最も現実的なシナリオかもしれない。

 民兵とは、退役軍人などで構成される準軍事組織で、正規軍の支援が任務。中国の海上民兵は約30万人とされ、常万全国防相は2016年7月末に浙江省海上民兵部隊を視察、「海の人民戦争の威力を発揮せよ」と訓示した。中国の建国初期に創設された海上民兵は、世界最大の漁船団で編制されている。近年は海上民兵の重要性が増し、建築資材の運搬から情報収集まで幅広い任務を果たすようになってきた。最精鋭部隊は、必要があれば機雷や対空ミサイルを使い、「海上人民戦争」と呼ばれるゲリラ攻撃を外国船に仕掛けるよう訓練されている。

 漁船1隻に海上民兵20~30人が乗船していると仮定する。200隻だと4000~6000人となる。海保の巡視船のみでこれに対応することが困難なのは、2014年に小笠原諸島周辺に集結した、200隻以上の赤サンゴ密漁中国漁船への対応を見ても明らかである。この時、海保は10人の中国人船長を逮捕したものの、あとの漁船は摘発することなく、領海から追い出すことしかできなかった。

グレーゾーンを突いた作戦

 あくまで「漁民」である以上、この作戦には軍事組織である中国海軍は直接的には参加しない。よって「有事」ではなく、「平時」における事態(日本政府の言うところのグレーゾーン事態)であるため、海自は手出しができないのだ。

 このため、尖閣諸島に上陸した漁民を装った海上民兵を排除するには、日本の警察官と海上保安官を大量に派遣することになる。では、どのように海上民兵を排除するのか、その方法が問題となるだろう。

 仮に武装した海上民兵が攻撃をしかけてきて、海保の対応能力を上回る事態とみなされた場合は、自衛隊は「海上警備行動」として武器を使用することが認められている。ただし、相手方と同等の武器しか使用できない(例えば、素手の相手に拳銃は使用できない)「警察比例の原則」が適用されるため、自衛隊が武力行使できない状態で尖閣諸島が占拠される可能性があるのだ。

 しかし、海上民兵にも弱点がある。長期間にわたり占拠するには、食糧や水の補給が必要となる。特殊部隊なみに訓練された海上民兵なら、蛇などを捕獲して食いつなぐことができるが、それにも限界があろう。長期にわたり「兵糧攻め」を行えば、海上民兵も投降せざるを得なくなるだろう。

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