「元ひきこもり」はコロナ自粛に強い? 山田ルイ53世に聞くおうちの楽しみ方――「あの人の#おうち時間」(12)

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 新型コロナによる「おこもり」は不自由だけれども、自由な時間は山ほどある!ということで、人生に突如として現れた「おうち時間」の過ごし方を紹介してもらうこの企画。第12回は芸人で作家の山田ルイ53世さん。さて、いかがお過ごしですか?

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 3月初めの時点で、向こう1カ月の地方営業は軒並みキャンセル。当然、4月、5月もイベント関係は白紙状態で、緊急事態宣言が出る前から、自宅にいることが増えました。

 といっても、よくよく考えると、普段から仕事が終われば家に直帰。休みの日に出かけることもなければ、ここ何年かは、芸人仲間と飲み歩くなんてこともない。

 つまり、そもそも結構家に居る人間なんです。

 感染拡大を防ぐために人との接触を減らす必要がある、それも8割だと言われていますが、平均的な社会人と比べても元々2割程度の人付き合いしかない僕のライフスタイルで、ここから8割減となると、もう家族を捨てるしかなくなります(笑)。

 今回の自粛生活は、仕事が減ったこと、そのことで家族、特に妻が不安になっているかもとの心配など、しんどい面も沢山ありますが、僕個人的にはそこまで苦ではありません。

 これは、中2の夏から20歳手前まで“ひきこもり”だったことが大きいかもしれません。ひきこもった経緯にご興味があれば、拙著『ヒキコモリ漂流記 完全版』を読んで頂くとして、とにかく多感な時期に外界との接触を10割、100%削減していたので、こういう状況に慣れているというか、良い悪いは別としてあまり抵抗感がない。

「人生が余ったな……」と虚無感に毎日苛まれていた10代のあの6年に比べれば、かなり気が楽。そういえば、20代の頃は、「電波少年」(日テレ)で1年間軟禁生活も送ってますし(笑)。

 今は、仕事での外出も多少ありますが、基本は家。ありがたいことに定期的に書き物のオファーを頂いたりするので、自室で原稿を書いていると日が暮れるといった感じです。

 他の在宅勤務のお父さんたちもそうでしょうが、子どもとの時間が増えました。下の娘はまだ10カ月。奥さんが食事の準備をしていて手が離せないときなど、泣き出した娘をよくあやしています。

 だからでしょうか、長女の時よりも子どもの日々の変化が手に取るように分かるようになりました。「最近ウンチが固まってきたな!」とか。

 この間は、下の娘が初めて歩き出した瞬間に遭遇。セミの羽化を目撃したような感動がありました。思わず、「今日、ついに歩き始めた!」と、動画を添えてツイートしましたね(笑)。別に長女が生まれたとき、多忙だったわけではないんですが、結構変化を見落としていたなと反省したり。

 あと、これも皆さんそうでしょうけど、Netflixとかは観てしまいますね。主に海外ドラマとアニメ。

 これは、「一発屋芸人あるある」ですが、一回ドーンと売れてから人気が急降下していく過程で、地上波のテレビ、特にバラエティー番組を直視できなくなる時期があるんですよ(笑)。ちょっと前まで自分が出演していた企画に、自分以外の誰かが出て大活躍というのがしんどい。なんともしょうもない理由ですが、この“症例”は他の一発屋仲間からも結構聞きます。

 だから、“一発”の後の下り坂の時期は、とにかくCSばっかり観てましたね。当たり前ですが、CSでやってる海外ドラマには、知っている芸人は誰も登場しないですから。自尊心が傷つかない(笑)。

 あの頃見てた、「ゴシップガール」とか「メンタリスト」、「プリズンブレイク」に「24」、あと「ロスト」なんかを、色々な動画配信サイトで、“一気見”してます。原稿を書きながら流し見したり、家族が寝た後にじっくり見たりするのも良し。

 割と最近の作品なら、「オザークへようこそ」、「ベター・コール・ソウル」(「ブレイキング・バッド」のスピンオフ)、「ブラック・ミラー」「ストレンジャー・シングス」「YOU ―君がすべて―」あたりが一押しです。アニメだと「とある科学の超電磁砲」とか好きですね。まあ、いろいろです。

 イベントが出来ない状況が続く中、ご多聞に漏れず僕も遂にYouTubeを……といっても、まあ難しい。この機に動画編集アプリの操作を少しずつ覚えて、自分のチャンネルを開設してとやっていますがこれがなかなか……。

 とりあえず、今年12年目に突入した自分のラジオ、「髭男爵 ルネッサンスラジオ」(文化放送)の収録後、構成作家とトークしている動画を週1でアップしてますが、チャンネル登録者数は1700人位です(笑)。とてもじゃないですがYouTuberにはなれません。

 まあでも、“一発”の後、暇を持て余して何となくブログを始めてみたら、偶然文章を見た編集者から執筆のオファーが……なんてことも過去ありましたからね。それが今、文章を書く仕事に繋がっていたりする。

 昨年は、日経新聞で半年間、毎週エッセーを書いていたんですが、誰も読んでいないブログで何となく愚痴を綴っていた頃は、そんなこと想像もしてない。月曜が大沢在昌さんで、土曜が僕ですからね(笑)。

 何が次の飯のタネになるのかわからない。そのうち、漫才の新ネタでも上げてみるかもしれません。

 今一番の心配事は、小学校2年生の長女が学校に通えない状態が続いていること。正直、勉強の遅れが気になっています。自宅学習といってもなかなか子どもも集中できないので、そこはいろいろと工夫してます。

 楽しく勉強できるように、我が家ではステイホーム期間限定の「小学校」を始めました。朝飯を済ませ、歯磨きやら着替えやらを終わらすと、いったん長女はリビングの外へ。改めてドアを開け、「おはようございます!」と元気に挨拶してから、教室(リビング)へ入る。先生役は僕と奥さん。

 学校の時間割のように勉強と勉強の間に10分休みを入れ、お昼ご飯は給食と呼びと、まあ「コント」ですが、そうすると、生活に多少はリズム感も出てくるし、娘もキャッキャと喜んで机に向かってくれるのでお勧めです。

 ちなみに僕は校長でありながら、体育教師も兼任するというトリッキーなタイプの教師(笑)。室内でトランポリンとか、天気が良ければ家の前でなわとびとかやらせてますね。

 まだ事態の終息には間がありそうですが、そこそこ機嫌よくやっております。

山田ルイ53世
1975(昭和50)年、兵庫県生まれ。お笑いコンビ・髭男爵のツッコミ担当。地元の名門・六甲学院中学に進学するも、引きこもりになる。大検合格を経て、愛媛大学法文学部に入学も、その後中退し上京、芸人の道へ。「新潮45」で連載した「一発屋芸人列伝」が、「編集部が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞し話題となる。著書に上記の連載をまとめた『一発屋芸人列伝』のほか、『ヒキコモリ漂流記 完全版』(角川文庫)、『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)、『中年男ルネッサンス』(田中俊之との共著/イースト新書)がある。

デイリー新潮編集部

2020年5月11日掲載

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