メジャー流出濃厚「鈴木誠也」の穴をどう埋める? 「広島」内・外野陣の将来に暗雲

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 マイナーリーグの下部組織が充実している米国では、常に3年後、5年後のオーダーを見据えながら選手の編成、補強を行っている。日本のプロ野球では登録枠数の問題から、そこまで選手を抱えることはできないが、ソフトバンクなどを筆頭に長期的なスパンで選手を獲得している球団が出てきていることも確かだ。そこで現在所属している選手で5年後のオーダーを組んだ時にどんな顔ぶれになるかを考えながら、各球団の補強ポイントを探ってみたい。今回は昨年リーグ4連覇を逃した広島だ。

・5年後の野手(※年齢は2025年の満年齢)
捕手:坂倉将吾(27歳)
一塁:堂林翔太(34歳)
二塁:菊池涼介(35歳)
三塁:メヒア(32歳)
遊撃:小園海斗(25歳)
左翼:宇草孔基(28歳)
中堅:西川龍馬(31歳)
右翼:高橋大樹(31歳)

・5年後の先発投手
大瀬良大地(34歳)
床田寛樹(30歳)
森下暢仁(28歳)
アドゥワ誠(27歳)
遠藤淳志(26歳)
山口翔(26歳)

・5年後のリリーフ陣
フランスア(32歳)
岡田明丈(32歳)
ケムナ誠(30歳)
島内颯太郎(29歳)
藤井皓哉(29歳)
塹江敦哉(28歳)

 リーグ3連覇を達成した広島の最大の強みは、田中広輔、菊池、丸佳浩、鈴木の固定された上位打線だったが、丸が巨人に移籍したほか、昨年は田中が故障もあって大きく成績を落とした。菊池は昨年オフに大型契約を結んで残留したものの、鈴木のメジャー移籍は既定路線となっており、その大きな穴をどう埋めるかが野手では最大のポイントとなりそうだ。

 捕手は、現在の正捕手である会沢翼が37歳となり、力の衰えは避けられないと考えて一覧からは外した。打てて守れる会沢の後釜も大変だが、こちらは坂倉の成長が頼もしい。二軍では圧倒的な成績を残しており、昨年は外野手としての出場がメインだったが一軍でも実績を積んでいる。2017年ドラフト1位の中村奨成も控えているが、現時点では坂倉が一番手となりそうだ。

 ファーストは堂林を入れたが外国人選手が入ることが予想され、また打力のある会沢を使うという手もある。このあたりはある程度、現有戦力でも補えるだろう。内野の要であるショートは小園の存在が大きい。昨年はルーキーながら40安打、4本塁打をマークし、守備面でも着実な成長を見せた。今年からレギュラーを奪う可能性も十分にあるだろう。セカンドの菊池も35歳という年齢を考えるとまだ余力がありそうだ。

 気がかりなのがサード。一覧にはメヒアを入れたが17年に結んだ長期契約は22年までであり、チームに残っているかは不透明だ。田中をショートから回すという方法もあるが、5年後は36歳となっており大きな期待はかけづらい。メヒアと同じ学年の三好匠もいるが、高校卒の若手である林晃汰や中神拓郎あたりが出てこないと外国人頼みになりそうだ。

 外野はセンターの西川は安泰だが、両翼は不透明な状況。期待を込めてドラフト2位ルーキーの宇草を入れたが、スローイングに弱点があり、プロで活躍できるかは未知数である。鈴木と同学年の高橋が今年のオープン戦で開花の兆しを見せていたのはプラス要因だが、やはり鈴木の穴を埋めるのは簡単ではなさそうだ。

 逆に弱点と見られている投手陣は、先発に明るい兆しが多くみられる。大瀬良は今のところ海外志向などは表明しておらず、5年後もローテーションの中心として期待できそうだ。昨年ブレイクした床田、ドラフト1位ルーキーの森下も故障がなければ十分に先発として期待できる。さらにアドゥワ、遠藤、山口と高校卒の好素材が後から続いており、実績のある野村祐輔、九里亜蓮を計算に入れなくても良いというのは心強い。

 ただ、一方のリリーフ陣は不安要素が多い。フランスアもメヒアと同様に長期契約の期限は過ぎており、残留しているかは不透明。中崎翔太、今村猛、一岡竜司、中田廉といったリーグ三連覇を支えたリリーフ陣は勤続疲労の色が濃く、5年後には戦力として期待するのは難しいだろう。昨年ルーキーながら25試合に登板した島内、今シーズン先発からリリーフに転向する岡田などの名前を挙げたが、安定感はまだまだ欠ける印象だ。このあたりをどう整備していくかが、投手陣の大きな課題と言える。

 野手では坂倉、小園、宇草、投手では森下、アドゥワ、遠藤といった楽しみな若手は少なくないが、鈴木の抜けた後の外野陣やリリーフなど所々に弱いところが見えてくる。ここ数年は外国人の当たりが多いが、それも続く保証はない。FAで選手を補強せずにあくまで自前で育てる球団だけに、長く中心選手となれる若手の輩出スピードを早めることが今後も重要になってくるだろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年5月5日掲載

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