コロナ禍での希望の光  「思いのほか低い致死率」「梅雨」「年内ワクチン」

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9月のワクチン実用化を

 仮に、日本ではまだ感染がピークに達していないとしても、これからの季節に救いを見出しうる、と医療ジャーナリストが言う。

「北京航空航天大と清華大の研究チームは、中国100都市での、新型コロナウイルスと気温および相対湿度との関係を分析し、論文を発表。季節性インフルエンザやSARS同様、高温と高湿度で感染力は大幅に減少することを明らかにし、北半球に夏と梅雨が訪れれば、感染を効果的に減らせることを示しました。米メリーランド大の研究チームも、新型コロナウイルスの“限られた緯度、温度、湿度に沿った感染拡大は、季節性ウイルスの挙動と一致する”と結論づけ、夏に向けて湿度が上がる地域では終息に近づくとしています。香港大のレオ・プーン教授の研究チームは、さまざまな温度でのウイルスの安定度を調べ、室温4度では14日経っても安定しているウイルスが、22度だと14日後には検出されず、37度だと2日後に検出されなくなった、としています」

 湿気をまとったウイルスは地面に落下し、雨が洗い流す、という報告もあるのだ。日本医科大特任教授の北村義浩氏も言う。

「高温多湿の環境では机や手すり、プラスチックや携帯電話の表面などについているウイルスも、不安定になる。感染しうるウイルスの粒子数が千分の1に減るまで3日かかったのが、梅雨の時期は2日に短縮されることはありえます。梅雨入り後、健康な人はエアコンで湿度を下げずに過ごすのも有効かもしれません。5月末から紫外線量も増えますから、感染者が減る可能性はあります」

 しかも、そもそも予防ワクチンが登場すれば、ウイルスは恐れるに足りなくなるだろう。いま世界中で、開発が急ピッチで進められ、オックスフォード大のチームは、夏のうちに5千人を対象に臨床試験を終え、秋には100万回分を準備することが目標だという。

 もっとも、北村氏はワクチン一般について、

「健康な人に投与するだけに、高い安全性が求められるので、通常はどんなに早くても1年以上かかる」

 と話すが、日の丸ワクチンがその常識を覆そうとしている、との朗報もある。大阪大の森下竜一教授(臨床遺伝子治療学)とともに開発をめざすベンチャー企業、アンジェスの取り組みである。山田英社長は、

「協定を結ぶ大阪府の吉村知事から、9月の実用化をめざすように求められました。2カ月前倒しでなかなかの挑戦ですが、できないことはないと思います」

 と自信を覗かせ、続ける。

「開発中の予防ワクチンは、我々がすでに確立していたDNAプラスミドという技術を活用しています。これは足の血管が詰まる慢性動脈閉塞症の治療薬コラテジェンに使われています。我々のワクチンは、コロナウイルスが細胞につくための“スパイク”とまったく同じDNAを投与し、細胞に“異物が来た”と判断させ、スパイクの型に合った抗体を作らせるというもの。病原体でなく、スパイクと同じ配列のDNAを投与するだけなのが特徴です。毒性があるウイルスを弱体化させたワクチンと違い、安全性の確保に長い時間がかかる心配もなく、コストも抑えられ、大量に製造することもできる。価格もインフルエンザの予防接種と同程度をめざしています」

 日の丸ワクチンが秋に日の目を見るなら、失われた日常が戻る日も遠くはない。世界同時多発的にワクチンができれば、来年の五輪にも支障はあるまい。

週刊新潮 2020年4月30日号掲載

特集「『コロナ』生死のカギ」より

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