コロナ後は「中国」が独り勝ち? 武漢から190万人移動に第2波の懸念も…

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無症状感染者のリスク

 先の外交電報でも、石氏が研究していたコウモリ由来のコロナウイルスが、〈人間に感染して、SARSに類似した疾病を引き起こす可能性がある〉と指摘されているのだ。

「彼女のチームの研究はあくまでもSARSに類似したパンデミックのメカニズムを解き明かして、それを防ぐことが目的です。ホワイトハウスも彼らが生物兵器を開発していたとまでは考えていない。ただ、アメリカがこの研究所をコロナの発生源として疑うのは理解できます」(同)

 実は、武漢の国際空港では昨年9月に突然、大規模な防災訓練が行われ、しかも、“飛行機の乗客に新型コロナウイルスの感染が確認された”設定だったという。中国は何かを察知し、数カ月後に発生する事態を予見していたのだろうか。また、武漢にはこの研究所以外にも、ウイルス研究に携わる“疾病管理予防センター”が存在する。

「中国側がこうした施設とコロナとの関係を否定するなら、海外からの検証チームを招き入れて、徹底的に調査させるべきです」(同)

 しかし、武漢は中国支配の及ぶWHOによる、通り一遍の調査を受けたのみ。WHOが“問題ナシ”としたと、中国は他国の検証チームの受け入れを頑なに拒絶している。

 いまだ疑惑の“渦中”にある武漢は、しかし、今月8日に2カ月半に及ぶロックダウンが解除されると、息を吹き返したかのような盛況ぶりを見せている。

 同市の胡亜波副市長は、中国中央テレビのインタビューでこう豪語する。

〈ゴールデンウィークに武漢へ遊びに来ることに問題はないはずだ。皆さんが武漢へ来ることを歓迎する〉

 同時に、封鎖が解除されてからというもの、空路や鉄道、自動車などで武漢を離れた人々は約190万人にのぼるという。前出の石平氏が危惧するには、

「事実上の終息宣言を出したものの、中国はウイルスに完勝したとは言い難い状況です。何より、無症状感染者が多く存在しているはずで、武漢からこれほどの人数が移動すれば第2波は避けられないと思います」

 李克強首相が主宰するコロナ対策会議も〈ゼロを追求するために隠蔽や漏れがあってはならない〉と、無症状感染者の管理徹底を各地方政府に厳命した。

 明らかに“第2波”を警戒してのことだろう。

 産経新聞台北支局長の矢板明夫氏によると、

「当の中国人も感染の封じ込めに成功したという政府発表を鵜呑みにしているわけではありません。確かに工場や飲食店は再開されましたが、共産党幹部が一堂に会する全人代はいまだに開かれない。さらに、北朝鮮やロシア、台湾という中国を知り抜いた隣国は中国からの入国規制を解いていません。こうした状況が変化しない限り、中国人は“安全”とは信じないでしょう」

 他方、このところ、「コロナ後は中国の独り勝ち」との予測もよく耳にする。

「弱者を切り捨て、人権を無視できるので経済活動の立ち直りも早い。これが中国の怖いところです」(同)

 すでに3月後半から中国本土での店舗営業を再開した“ルイ・ヴィトン”は売り上げが大幅に回復。前年同期比で1・5倍近い伸びを見せているという。百貨店やブランドショップがシャッターを下ろしたままの日本と比べれば、その差は歴然としている。

 また、世界各国がコロナ対応に追われるなか、“コロナ後”の覇権争いを見据えた中国の動きには目を見張るものがある。シグマ・キャピタルのチーフエコノミスト、田代秀敏氏によると、

「コロナ禍はアメリカの安全保障能力を揺るがしています。実際、米軍が太平洋に展開する空母4隻では感染者が続出し、出動不能状態に陥っているのです」

 事実、その間隙を縫って、尖閣沖ではこれみよがしに中国の公船がコロナ禍のいまも領海侵入を繰り返している。さらに、

「今月14日にはデジタル人民元のテスト運用が始まりました。原油先物の決済通貨はドルですが、イランはアメリカからドルの利用を止められ、原油輸出が困難になっています。ベネズエラ、ロシア、サウジアラビアも、いつそうなるか分からない。そうした各国が世界最大の原油輸入国である中国に奨められれば、デジタル人民元に乗り換える可能性は否定できません。一方、コロナワクチン開発でも中国は安全性をチェックする第1段階を終えて、効き目を確かめる第2段階に進んだと発表しています。生命にかかわる病はイデオロギーよりも切実なので、いくら中国が嫌いでも、ワクチン開発に成功したら頼らざるを得ません。そうなれば中国は米国の覇権をさらに弱体化させるでしょう」

 自らが世界中に蔓延させたウイルス禍で焼け太りする中国に我々の“生死のカギ”を握らせてはなるまい。

2020年4月30日号掲載

特集「『コロナ』生死のカギ」より

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