【コロナ禍】東京「新大久保」でマスクが大量に売られているワケ…ただし今だけ?

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中国からのお達し

 もっとも、こうした状況は今後また変わってくるかもしれません。3月末、中国製のコロナ検査キットが粗悪品だとして、輸入したスペインが約5万8000個を返品する騒動がありました。検査キットと同様、マスクもその“質”が問われる品であることは間違いありません。そのため、先のブローカー氏によると、4月18日付で、中国はマスク輸出の取り締まりを厳しくしたそう。〈「医療用」といえるか否か、基準を明確にし、そうでなければ「非医療用」と包装に明記しなくてはならない〉〈メーカー名や生産日などの情報は包装に印刷しなくてはならない(シールでの後付けはNG)〉といったルールの厳格化のお達しがあったといいます。今後の輸出に影響するため、粗悪品は輸出しないという、中国共産党の決意の現れでしょう。

〈包装は小売りのできる形で〉というのも新たなルールです。こうなるとバルク包装、つまり先の(写真2)のような簡易包装で中国から仕入れることもできなくなります。包装がしっかりすると、そのぶんモノの容積は増える。「輸送時に積み込める量が減り、コストアップにつながります」と先のブローカー氏は嘆いていました。となるとそのコストは、売価にも反映されます。

 日本ではシャープなど、マスクの生産を始めた企業があります。シャープは4月21日から、個人に向けてネット販売も始めました(50枚で税抜き2980円、別途660円の送料)。こうした新たな生産体制があるから安心だ、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、日本国内生産の一日当たりの供給量は推定650~850万枚です。これとは別に、ソフトバンクが中国の自動車メーカーBYDと連携し、医療現場を中心に1日1000万枚を5月から供給すると発表しています。それでも日本の人口は1億2596万人ですから、やっぱり品不足は続きそうです。

 ここまで見てきたように、使い捨てマスクの価格高騰は、日本ではコントロール出来ないため、やむを得ません。医療従事者など、使い捨てできる不織布マスク不足に困っている人は多いです。いろいろ言われても、一般人は、使い捨てから布マスクにシフトするべきかもしれません。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『FNN Live News α』レギュラーコメンテーター、デイリースポーツ紙にて「最新流通論」を連載中。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月22日掲載

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