「スーツ2」初回放送で発見した“もの凄いこだわり“ ゲストとカットに隠れた意図がある

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視聴者を飽きさせない工夫

 では、初回放送にはどんなことがあったのか。

 例えば、今回の初回放送だけで反町隆史、玉城ティナ、加藤ミリヤ、野間口徹、森七菜、友近など、6人ものゲスト出演者が登場した。

 ここで言う「ゲスト出演者」とは、例えば「古畑任三郎」における犯人役みたいなものだ。犯人役は、たいがい古畑任三郎演じる田村正和と張り合う程の強いキャラクター性を持っている。だから、そういう役割の人は連ドラでは一話につき一人で十分。見る側が“お腹いっぱい”になるからだ。

 初回「SUITS/スーツ2」では、ゲスト出演者がこの一話だけで6人、つまり通常の連ドラ6話分と同じ人数がゲスト出演していることになる。これはやはり過剰だろう。

 感心するのは、単にその出演者の多さだけではない。彼らの「登場方法」だ。

 出演者は、放送開始からどれくらいの時間で初登場したのか。また、全部で6本あるCMのうち、各ゲストは何本目のCM後で初登場したのか。この二点を整理したのが下記である。

(1)加藤ミリヤ…2分後/番組開始直後

(2)反町隆史…20分後/1本目のCM後

(3)玉城ティナ…23分後/2本目のCM後

(4)野間口徹…27分後/2本目のCM後

(5)森七菜…36分後/3本目のCM後

(6)友近…52分後/5本目のCM後

 これを見ると、ゲスト出演者の初登場のタイミングをなるべく均等にしようという意図が見える。6人ものゲストを“定期的に”登場させることによって、視聴者を飽きさせないようにしたのだろう。

 視聴者を飽きさせないという点では、このドラマは冒頭もすさまじかった。

 最初のCMが入る前、冒頭の放送時間は約14分。

 最初ここを見たとき「カット数が多いな」と感じ、試しに交通量調査で使われるカウンターを手に、そのカット数をカウントしてみた。

 244カットあった。

 鈴木大輔役演じる中島裕翔のシーンなどが速すぎて上手にカウントできなかったのでこの正確さに自信はないけれど、およそ240~250カット程度であることは間違いない。つまり、14分(840秒)の間に240カットあるとすれば、約3秒に一度はカメラワークが変化していることになる。

 例えば、映画はワンカット6秒~10秒のものが多かったり、「ジブリアニメのワンカットは平均5秒」などと言われていることを考えると、ワンカット平均3秒はかなりの高速だろう。

 これも飽きさせない演出の一つだ。

 また、このドラマの舞台がまるでニューヨークであるかのような「東京のビル群映像」をCM明けに挿入させている。ドラマの合間に放送されたCMは全部で6本。それが明けるたび「東京のビル群映像」を毎度正確に3カットずつ挿入していたから、これは制作側が完全にフォーマットとして戦略的に行っていたことなのだと推測される。元々の米ドラマ「SUITS」が持つ“ドライな都市的世界観”へといざなうための一種のサブリミナル的映像なのだろう。

 こうしたことも含めて6人ものゲスト出演者をそれも出来るだけ均等な間合いで出演させたり、冒頭の“掴み”を1カット平均3秒という高速にしたことなども、すべては視聴者をこの世界に没入させようとする彼らの「執念」のように感じた。

 この執念が功を奏したというべきか、4月13日の放送された初回の平均視聴率(世帯)は11.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。

 この数字は「視聴率的には、まあまあの成功」ということになるのかもしれないが、視聴者もバカではない。

 今、私たちは日々厳しい世界に直面して生きている。

 そんな世界を「一時でも忘れさせてこのドラマに没入させよう」とする制作スタッフや出演者の凄まじい執念が二話以降も継続すれば、番組スタッフの執念は今後さらに視聴者へと届いていくことになるだろう。

尾崎尚之(@YuuyakeBangohan)/編集者

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月20日掲載

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