保育園や幼稚園に通わない「無園児」は9万5000人 自治体も放置で救済方法はただ一つ

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 2018年3月、東京都目黒区で両親から虐待されて亡くなった船戸結愛ちゃん(当時5歳)は、保育園や幼稚園に通っていない「無園児」だった。北里大学医学部の講師で医学博士の可知悠子氏は、4月に『保育園に通えない子どもたち―「無園児」という闇』(ちくま新書)を出版。虐待を受けている無園児が少なからずいると警鐘を鳴らしている。

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 保育園や幼稚園に通わない未就園児は、地域社会とのつながりがないことから、「無縁」とかけて「無園児」と呼ばれている。可知氏の専門は、社会疫学。健康は社会環境などの要因に影響されることを明らかにする学問で、幼児教育は本来、専門外だ。彼女が無園児の存在を知ったのは、2017年10月である。

「安倍首相が同じ年の9月の会見で、3~5歳の幼児教育を無償化すると発表しました。それを受ける形で、厚労省のさる官僚が10月にフォーラムを開催しました。その方は講演で無園児の統計を紹介。3~5歳の子どもの1割は保育園や幼稚園に通っておらず、生育状況すら確認されていないと話していました。この無園児はどういう子どもなんだろう、と私の心がざわつきました。ひょっとして、無園児の中には虐待を受けている子どもがいるのではないかと、危機感を覚えたのです」

 と語るのは、可知氏。彼女は無園児のことが気になり、研究を始めたという。

「幼児教育の色んな専門家にも話を聞きました。ですが、私のような危機感を持っていた人はいませんでした。保育園や幼稚園に通わせないのは、お金持ちで自宅で独自の教育を受けさせているからだろうと言うのです。正直言って、私の危機感は間違っているのかもしれないとも思いました。そんな時、目黒女児虐待事件が起こったのです。結愛ちゃんが無園児だとわかった時、『やはり、問題だ』と思いました」

 2018年の内閣府「幼児教育の無償化に係る参考資料」によると、無園児の割合は、3歳児で5・2%(5万1000人)、4歳児で2・7%(2万7000人)、5歳児で1・7%(1万7000人)となっている。3~5歳までの無園児は9万5000人もいることになる。

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