「積水ハウス」の地面師事件 会長は詐欺だと分かっていた!前トップが告発

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 東京・西五反田の旅館跡地を舞台にした巨額詐欺事件が取り沙汰されたのは3年前のこと。“土地所有者”を演じる地面師一味と契約したことで、積水ハウスは55億円もの巨額の資金をまんまと騙し取られた。この事件をめぐり、かつてのトップが経営陣を名指しで告発する。

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 事件が発覚した後、積水ハウス内では、こんな「交代劇」が行われていた。

「本来は、土地取引の稟議書に判をつき、いわばゴーサインを出した当時の社長である阿部氏ら役員の経営責任が問われてもおかしくないところ、2018年2月に阿部氏は会長に昇格し、和田会長が実質的に解任される電撃人事が発表されたのです」(全国紙の社会部記者)

「阿部氏」とは現会長の阿部俊則氏、「和田会長」は前会長でCEO(最高経営責任者)だった和田勇氏を指す。交代について、表向きは事件との因果関係が否定されているが、18年1月の役員会で和田氏が「阿部解任」の動議を、阿部氏が「和田解任」の動議をそれぞれ掲げ、結果的に和田氏が社を追われることとなっていた。

「私自身、お人好しで脇の甘いところがあったと反省しています……」

 と語るのは、当の和田氏だ。和田氏によれば、事件は17年6月にくだんの土地取引が終わった後の役員会で知ったという。

 事件を公表するよう主張する和田氏に、部下は猛反対。当時の法務部長からは“捜査の妨げになるから”と止められたとも振り返る。

「警察の偉い人に確認してみたら、止めるような話ではないと。おそらく、阿部君たちは事件化するのを恐れて特損計上で切り抜けるつもりだったのでしょう」

 結果、積水ハウスが公表に踏み切ったのは、事件発生から2カ月が経ってからだった。和田氏の指示により調査委員会も設置されたが、その調査報告が公になる前に、先の「交代劇」が起きてしまう。結果、阿部氏を会長とする積水ハウスの“現政権”は、今日にいたるまで調査報告書の全文公開に応じていない。

 来る4月23日に行われる定時株主総会を前に、和田氏ら「前会長派」は阿部会長をはじめとする4人の代表取締役の退陣を求める株主提案を提出している。

「土地取引の稟議書へ最初に判を押したのは社長(阿部氏)でした。そのため、幾つも疑わしいことが重なっても“社長案件”となって周囲が忖度し、契約に突き進んでしまった点は否めません」

 と言うのは、「前会長派」で現取締役の勝呂文康氏である。

「取引の経緯や対応を検証すれば、本当に被害者だったと言えるのかは疑問が残りますね」

 契約に当たっては、問題の土地の本当の所有者から「積水ハウスが交渉している相手はニセモノだ」と“忠告”する内容証明郵便が送られてもいた。決裁権者の阿部氏は、内容存在の存在を知っていたにもかかわらず、必要な確認を怠った――勝呂氏はこう主張するのだ。

 お家騒動にも波及した地面師事件。4月16日発売の週刊新潮で、和田氏らの告発を詳しく掲載する。

週刊新潮 2020年4月23日号掲載

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