新型コロナで食糧価格高騰の危機 食糧輸入大国の「日本」がやるべきことは?

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日本がとるべき対策は

 いずれにせよ、日本も不測の事態に備えて対策を講じる必要性が高まっている。

 コメの輸入関税率が280%であることから、日本の農産物の競争力は低いと思われがちだが、野菜の関税率は概ね5%以下とそれほど高くない。世界中にトマトを輸出している農業大国オランダは日本市場もターゲットにしているが、なかなか日本産のトマトに対抗できないでいる。トマトにかかる関税率はわずか3%であるにもかかわらずに、である。

 日本の食糧自給率はカロリーべースでは37%(2018年度)と世界最低だが、生産額ベースでは66%と英国(58%)を上回っている。ちなみに食糧自給率の算定は世界的には生産額ベースが一般的であり、カロリーベースを重視しているのは日本のみである。新型コロナウイルスの感染拡大により、日本の農家は人手不足に直面している。日本政府が中国からの入国を制限したことで、今年春から来る予定だった外国人技能実習生の確保に目途が立っていないのである。北海道では約8400人の実習生(食品加工5300人、農業2800人、水産加工300人)が食の現場を支えているが、春以降は減産せざるを得ない事態に追い込まれている。静岡県の燃津市の水産加工会社、長野県のレタス農家。青森県のリンゴ農家。群馬県のキャベツやホウレンソウ農家なども同様である。

 加えて国内の農業従事者の8割が60歳以上となり、高齢化が止まらない。

 若者の農業への参入が話題になっているが、2018年の49歳以下の新規就農者は前年比7%減の1万9290人となり3年連続で前年割れとなっているのが実態である。

 農林水産省は今年から若年層に加え中年層(50歳代)の就農を支援する動きに出ている。今後の生活を見据え農業に挑戦する層が一定数いると考えているからだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大を契機にテレワークなどの働き方改革に注目が集まっているが、都市部で発生した失業者に対し、農業の担い手になることを条件に金銭的インセンティブを付与すれば、日本の農業基盤が強固になり、食糧安全保障に資することになるのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所上席研究員。1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)、2016年より現職。

週刊新潮WEB取材班編集

2020年4月15日掲載

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