新型コロナで食糧価格高騰の危機 食糧輸入大国の「日本」がやるべきことは?

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 WHO(世界保健機関)やWTO(世界貿易機関)など3機関は4月11日までに、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な流行)により輸出管理が広がれば、「国際市場における食糧不足が起きかねない」とする声明を出した。

 主要穀物の供給量は潤沢であり、国際価格はここ数年低い水準で推移してきたが、国内市場を優先する穀物輸出国が輸出規制に乗り出したことから、徐々にその価格が上昇し始めている。

 世界最大の小麦輸出国であるロシアは2日、「6月までの穀物輸出について割当制を導入した」ことを明らかにした。通常は穀物輸出に制限を課していないが、上限を700万トン(前年同期の輸出は約720万トン)に設定した。ウクライナも6月末までの小麦輸出量に上限を設けた。

 世界最大のコメ輸出国であるインドは、4月から人手不足と物流上の問題によりコメ輸出を停止した。輸出量3位のベトナムも輸出を抑制している。

 2007年から08年にかけての食糧危機は、コメの大輸出国であるインドとベトナムが国内価格の上昇を回避するために輸出を規制した結果、国際価格が急騰し、一部の発展途上国で暴動が起きた。

 食糧危機は穀物生産国における干ばつなどによる供給不足で価格が高騰し発生すること多いが、今回の場合は感染症対策のための移動規制で物流が寸断されるという悪条件が重なっている。世界中で何百万人もの労働者が移動制限で田畑に出られなくなっている。商品を移動させるトラック運転手も不足し、生鮮食品を運ぶ航空輸送能力も急減した(4月9日付ロイター)。

 このような状況の中で、食糧の大輸入国である日本は「対岸の火事」では済まされない。

 昨年の農林水産物輸出額は約9121億円だったのに対し、輸入額は約9兆5166億円と日本は圧倒的な食糧輸入大国である。国別の輸入金額を見てみると、第1位は米国(1兆6470億円)、第2位は中国(1兆1911億円)となっている。

 米国からの輸入はこれまでのところ支障は生じていないが、中国からの輸入は新型コロナウイルスの感染拡大などにより、ニンニク、タマネギ、ネギ、ニンジン、ゴボウ、キャベツなどの品目に影響が出ている。

 新型コロナウイルスで打撃を受けた中国の農業は、新たな危機に直面しようとしている。

 中国当局は2月27日、「中国は、東アフリカで発生しインドやパキスタンに広まったサバクトビバッタの大群の侵入リスクにさらされている」と警告し、各部門に被害拡大防止体制を整備するよう求めた。

 サバクトビバッタはアフリカと中東の乾燥した地域に生息しているが、大雨が降って植物が繁茂するとその数が飛躍的に増加する。東アフリカとアラビア半島は、過去2年間サイクロンに複数回見舞われるなど異常に雨の多い天気が続いていた。

 増えすぎたサバクトビバッタは移動し始める。サバクトビバッタは1日当たり約150km移動できるとされており、被害地域は拡大するばかりである。

 FAO(国連食糧農業機関)によれば、3月末時点で約4億匹であったサバクトビバッタは6月末までに約500倍の2000億匹に増殖し、パキスタンなどを経由して中国まで到達する恐れが出てきているのである。

 中国における農業人口は約6億人、GDPに占める農業の割合は7%強である。中国の農業生産力はけっして小さくないが、急増する国内需要のせいで、今や小麦、トウモロコシ、大豆などの大輸入国となっている。

 サバクトビバッタの襲来で中国の農業が深刻な打撃を受ければ、「国内生産比率が高いトウモロコシや小麦などの供給を補填するため、中国が国際市場から大量な買い付けを行う」との憶測から主要穀物の国際価格が急騰するリスクが生じるだろう。

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