アイ~ンはギャグじゃない…新装版!! 志村けん『変なおじさん 完全版』刊行

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初めて女を知ったのは…

 アマゾンで、最安値でも6480円、最高で1万3800円で取り引きされた『変なおじさん 完全版』(新潮文庫)。4月15日、新装版の刊行が決まった。面白さ満点、それでいてしんみりもくる……その読みどころを紹介する。

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〈コントしかできない、女と酒が大好きな「変なおじさん」が、ちょっとだけ後ろをふり返ってみた〉と、自嘲気味にプロローグにはあるが、いやいや、期待を裏切らない何とも濃密な1冊である。特筆すべきは秘話に溢れていることだ。

〈初めて女を知ったのは、ビートルズのおかげだった〉という書き出しの童貞喪失話はやっぱり気になるし、最初の同棲相手は16歳。その女性との間にあった過去も明かされる。

 本書のタイトルにもなったあの「変なおじさん」は、〈アイドルのかわいい子が口をつけたコップやストローをなめてみたいとか、スカートの中に顔を突っ込みたいっていう気持ちは、きっと男なら誰でもあるんじゃないか。でも素の僕がそれをやってしまったら、やっぱりマズいだろうから、変なおじさんのコントだからという言い訳をしてやってるわけ〉という“願望”から。

 令和の時代、芸人にさえポリコレやコンプラの徹底は強く求められる時代であるが、当時は牧歌的だった。“大好きな女とコント”が結びつくために、〈僕は、女の子の出演者に対しては、早く打ちとけようと思って、スタジオでもすぐに胸やお尻をさわったりする。まわりに誰がいようが関係ないから、「なんだ、あいつは女のケツばっかさわりやがって」と思われてたかもしれないけど、現場がいつもワーキャー言ってるような雰囲気じゃないと、やってる方もなかなかコントを楽しめない〉

 全員集合のころから、ゲストの歌手と絡む機会が多かった志村は、「ゲストがコント好きか否か」を知るためにあることを試していたし、あの「だいじょうぶだぁ」がどこの何から生まれたか、つまり「ネタ元」についてもちゃんと触れてくれている。

〈僕が8時台に『だいじょうぶだぁ』を始めた時は最初は視聴率は1ケタだった。それがだんだん上がって28%くらいになると、9時からのドラマにも火がついて、田原俊彦の『教師びんびん物語』が大ヒットした〉

 という時代に、〈やっぱり一緒に飲みに行ったりしてワーワーやって、あうんの呼吸でコントをできるようにならないとダメだ。飲みに行った時に、できたコントもけっこうあった〉

 その後に具体的なコント名が記されている。

「バカ殿」で共演した東八郎の謦咳に接した際には……。

〈「ケンちゃん、お笑いはバカになりきることだよ。いくらバカをやっても、見る人はわかってる。自分は文化人だ、常識があるんだってことを見せようとした瞬間、コメディアンは終わりだよ」 僕はずっと、その言葉を大事にしている〉

 他方、田代まさしへの愛と信頼は格別だったようで、「志村けんのだいじょうぶだぁ」をスタートさせる際に、〈じゃあ誰に出てもらおうかという時になって、まず頭に浮かんだのが田代まさしだった〉

〈だから「何かの時には、こいつに頼めばいいや」という共演者が欲しくなっちゃう。男では田代がそばにいるから大丈夫だろうとか〉

 覚醒剤との縁を切れないままの田代のことは気にかかり続けたことだろう。

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